交感神経の活動を促進することで血圧を上昇させ、低血圧症状を改善する薬剤。本態性低血圧や起立性低血圧、さらにはショック状態(出血性ショック、アナフィラキシーショック)などにおける低血圧状態に用いる。
血圧は、交感神経と副交感神経(自律神経)によってコントロールされている。たとえば、交感神経が優位になると心拍数が増加し、血管が収縮することで血圧は上昇するが、副交感神経が優位になった場合は、血管が拡張することで血圧が下がる。このことから昇圧薬は、代表的な交感神経刺激薬といえる。
なお、心臓の機能が低下して収縮期血圧(心臓が収縮したときに血管壁にかかる圧力)が低い急性心不全などの疾患に対し、心臓の機能を高めて収縮期血圧を上昇させる薬剤は「強心薬」とよばれる(「強心薬」に関しては別項目を参照)。
[北村正樹 2024年6月18日]
カテコールアミン(カテコラミン)は副腎(ふくじん)髄質で産生され、血圧の調節をしているホルモンである。カテコラミンにはアドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン(ドパミン)など数種類あり、心臓および末梢(まっしょう)血管の交感神経に存在するアドレナリン受容体(α(アルファ)受容体、β(ベータ)受容体)を介した強心作用(心臓の収縮力を増加させる作用)、さらに昇圧作用(血管を収縮させる作用)を有している。しかし、臨床現場で使用されているカテコラミン製剤(類似製剤を含む)においては、アドレナリン受容体の選択性を含めて受容体への作用や薬理作用に違いがあることから、有効成分によって適応症が異なる。カテコラミン製剤のなかでもとくに、皮膚毛細血管の収縮により末梢血管抵抗を増大させることで血圧を上昇させるα1受容体に強い刺激作用がある薬剤が昇圧薬として用いられている。
昇圧薬のおもな副作用としては、消化器症状(吐き気、食欲不振など)や循環器症状(動悸(どうき)など)が現れやすくなるので十分注意する必要がある。
具体的な製剤名としては、アドレナリン(注射)、ノルアドレナリン(注射)、フェニレフリン塩酸塩(注射)、エチレフリン塩酸塩(注射)、ミドドリン塩酸塩(内服)、アメジニウムメチル硫酸塩(内服)、ドロキシドパ(内服)、エフェドリン塩酸塩(注射)がある。
[北村正樹 2024年6月18日]
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