16世紀後半から17世紀初めごろまでの南蛮交易時代に、ポルトガル船によって日本にもたらされた南蛮菓子の一種。ポルトガル語でアルフェロアalfeloa、つまり「砂糖菓子」であるから、「有平糖」では「糖」が重言になっている。またアルヘル、アリヘイともいう。製法について1718年(享保3)刊の『古今名物御前菓子秘伝抄』に、「上々氷砂糖一返(いっぺん)洗ひ捨て、砂糖一斤に水一、二升入れ、砂糖の溶け申す程煎(せん)じ、絹にてこし、其(その)後煎じつめ、匙(さじ)にて少しすくひ、水に冷し、うすく伸ばしぱりぱりと折れ申す時、平銅鍋(なべ)に胡桃(くるみ)の油を塗り、その中へうつし、鍋こしに水に冷し、手につき申さぬ程にさまし、その後成る程引伸ばし候へば白くなり申候を小さく切り、いろいろに作るなり」と記されているが、『和漢三才図会(ずえ)』(1715)には、円形で胡桃のような筋のある菓子、と説明され、単純な形状であったようである。いろいろに細工され、紅白黄緑に彩色されて妍(けん)を競うようになるのは、文化・文政(ぶんせい)年間(1804~1830)以降である。とりわけ京菓子司による細工物は風流典雅を極め、干菓子の仲間入りをして、桃の節供の飾り菓子や茶席での添え菓子、祝儀菓子として今日まで珍重されてきた。
[沢 史生]
室町末期に伝えられた南蛮菓子の一種。ポルトガル語のアルフェロアalfeloa(砂糖菓子,糖みつ菓子)のなまりで,アルヘイ,アルヘル,アルヘイルとも呼ばれた。江戸初期から文献に名が見られ,1689年(元禄2)刊の《合類日用料理指南抄》はじめ数種の料理書に製法が記載されている。現在では,砂糖に水あめと水を加えて煮つめ,急冷して固いあめにするもので,冷めきらぬうちに細工して,雛祭の飾菓子などにする。梅干しあめ,鰹節あめなども,この一種である。
執筆者:池田 暉
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