日本大百科全書(ニッポニカ) 「木村石」の意味・わかりやすい解説
木村石
きむらいし
kimuraite-(Y)
カルシウム(Ca)とイットリウム(Y)の含水炭酸塩鉱物。1986年(昭和61)長島弘三(こうぞう)(1925―1985)らにより佐賀県肥前(ひぜん)町切木(きりご)(現、唐津(からつ)市肥前町切木)のアルカリ橄欖(かんらん)石玄武岩の空隙(くうげき)中から発見された新鉱物。アルカリ玄武岩中に産する希土類元素の鉱物はほかに例がない。その後周辺地域をはじめ、福島県川俣(かわまた)町を含む世界各所の花崗(かこう)岩質ペグマタイト中で二次鉱物としての産出が確認された。原記載者らは同類の希土類の含水炭酸塩鉱物との間の結晶学的類縁性も明らかにした。自形は板状になるが輪郭は明らかでない。空隙中の共存鉱物にネオジムランタン石lanthanite-(Nd)((Nd,La)2[CO3]・8H2O)、ロッカ石などがある。命名は日本の希土類元素鉱物研究の先駆者で分析化学者の木村健二郎にちなむ。
[加藤 昭 2016年3月18日]