頭文字をとって、UFO(ユーエフオー。ユーフォーとよぶのは日本だけ)と略称される。「空飛ぶ円盤」とほぼ同義語。アメリカをはじめ世界各地で、自然現象や地球文明の産物として説明のつかない不思議な飛行物体が目撃され、あるいは写真撮影されるなどの事件が報告されているもののこと。その実態をめぐって論議が交わされている。1979年(昭和54)日本で行われた世論調査では、UFOの存在を信ずる者26%、信じない者60%で、78年のアメリカでの世論調査では、存在するが57%、存在しないが27%であった。UFO論争の本場はアメリカである。プロ、アマチュアを問わず、天文学者は一般にUFOに対して否定的であり、激しい拒絶反応を示す。その理由として、天文学者自身で見た体験がない、気球や大流星出現時に電話攻勢に悩まされる、否定論を公言すると脅迫状で脅かされる、明確な事件報告の論文がない、天文学の専門分化が進んでいる現状において担当者がいないことなどがあげられる。天文観測で広い空を長時間見張っているにもかかわらず、UFO観測の報告は一例もない。
不思議な現象なら世の中に多いにもかかわらず、とくにUFOが着目されるのは、それが異星人の地球訪問ではないかと疑われるからである。個々のUFO事件を説明する努力が失敗に終わったあとで、最後の説明として、高度技術をもった異星人の飛来であると結論するのがその手順である。しかし報告は通常あいまいで、調査には労力を要し、かつ報告数が膨大であるので、科学の対象として魅力のないテーマとなっており、1977年のアメリカ天文学会会員に対するアンケートでは「興味があっても研究の仕方がわからない」という回答が多かった。宇宙人探しはロマンに満ちたテーマであるが、科学の立場でいえば、電波探索のような仕事が主流であって、UFOから探し出そうとするのは安易な発想である。
UFO問題は天文学のテーマというよりは、むしろ社会心理学、異常心理学、児童心理学などのテーマである。かつてはその存在が信じられていた天狗(てんぐ)、河童(かっぱ)、妖精(ようせい)、そしてネス湖の恐竜、ヒマラヤの雪男などの流れの延長線上にUFOは存在している。しかし、その存在が社会問題化しているUFOの本場アメリカでは、その圧力のためもあって、科学者のレベルで否定論と肯定論それぞれの立場から研究テーマとして取り上げられている。
たとえば、天文学者D・H・メンゼルとその後を継いだ電子技術者P・J・クラスは、実例調査を行って、飛行機、気球、明るい星、火球、異様な雲、錯覚、レーダー誤動作などの誤認であることを明らかにしている。一方、天文学者J・A・ハイネックは肯定論を展開しており、またアメリカ宇宙航空学会にはUFO委員会があって、大気物理学者J・E・マクドナルドも肯定論者であった。こうした調査の頂点、原点をなすのは、1966年に7億円を支出して2年間にわたってコロラド大学で実施された実例調査で、1000ページ余に及ぶ「コンドン報告」としてまとめられており、そこでは「UFOをこれからさらに徹底して研究することは、その研究によって科学が進歩するだろうという期待によって正当化できるものではないと結論される」としている。
UFO肯定派には二つの流れがある。一つの流れはアダムスキーのベストセラー『空とぶ円盤同乗記』など、テレパシーにもつながる荒唐無稽(こうとうむけい)な話の「信者」たちであり、もう一つの流れは「まじめな研究」を標榜(ひょうぼう)するグループである。後者は前者と混同されるのを迷惑がっているようだが、やはり「信者」であることに変わりはないようにみえる。
UFOが科学の普及・啓蒙(けいもう)の一つの入口として役だつという意見もあるが、むしろ超心理学などの神秘主義への入口となる可能性のほうが大きいとも考えられる。
現在、UFOの発見を報告するところとしての公的機関はない。流星、火球などの報告は天文関係機関で受け付けている。
[横尾広光]
『C・G・ユング著、松下洋一訳『空飛ぶ円盤』(1976・朝日出版社)』▽『R・エメネガー著、南山宏訳『UFO大襲来』(1976・KKベストセラーズ)』▽『三島由紀夫著『美しい星』(新潮文庫)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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…〈ユーエフオー〉ともいう。通常,〈未確認飛行物体〉と訳される。1947年6月24日,アメリカの実業家アーノルドK.Arnoldが西海岸ワシントン州のレイニア山付近上空を自家用機で飛行中,高速で飛翔する九つのなぞの物体を目撃したのが最初とされ,その形状を〈受け皿(ソーサー)〉にたとえたことから,〈フライング・ソーサーflying saucer〉という呼び名が生まれた。…
※「未確認飛行物体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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