杉浦明平(読み)スギウラミンペイ

デジタル大辞泉 「杉浦明平」の意味・読み・例文・類語

すぎうら‐みんぺい【杉浦明平】

[1913~2001]小説家評論家愛知の生まれ。東京帝大卒業後、ルネサンス文学研究没頭戦後郷里の愛知県渥美あつみ町に住み、地方色豊かな文学活動を展開。「小説渡辺崋山」で毎日出版文化賞。他に「ノリソダ騒動記」「哄笑の思想」「戦国乱世の文学」「維新前夜の文学」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「杉浦明平」の意味・わかりやすい解説

杉浦明平
すぎうらみんぺい
(1913―2001)

小説家、評論家。愛知県渥美(あつみ)半島の生まれ。東京帝国大学国文科卒業。在学中『アララギ』『未成年』などで活躍。卒業後イタリア語を学んでルネサンス文学研究に没頭。第二次世界大戦後郷里渥美町(現田原(たはら)市)に定住、短歌論、文芸評論執筆。地方政治に深入りし、その体験に基づく『ノリソダ騒動記』(1953)、『基地六〇五号』(1954)、『台風十三号始末記』(1955)は、斬新(ざんしん)な記録文学として好評を博した。1960年代後半から小説も書き、代表作『小説渡辺崋山(かざん)』(1971)は歴史小説の傑作として毎日出版文化賞を受けた。ほかに『ルネッサンス文学の研究』(1948)、『戦国乱世の文学』(1965)、『維新前夜の文学』(1967)などの著書がある。

[山田博光]

『『杉浦明平記録文学選集』全4巻(1971~72・読売新聞社)』『『小説渡辺崋山』全8冊(朝日文庫)』『『維新前夜の文学』(1993・岩波書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「杉浦明平」の意味・わかりやすい解説

杉浦明平
すぎうらみんぺい

[生]1913.6.9. 愛知,福江
[没]2001.3.14. 愛知
評論家,小説家。第一高等学校を経て 1936年東京大学国文学科卒業。在学中『帝大新聞』の編集に従い,かたわら立原道造,寺田透らと同人誌『未成年』を創刊土屋文明に師事して作歌を続けていた時期もある。第2次世界大戦後,丸山真男,野間宏らと『未来の会』 (機関誌『未来』) を結成,『戦後短歌論』 (1951) などで評論家として認められたが,その後,地方政界の腐敗をあばいた『ノリソダ騒動記』 (53) ,アメリカ軍基地反対運動を描いた『基地六〇五号』 (54) などでルポルタージュ文学の新しい成果を示した。さらに歴史小説にも手を染め,『小説渡辺崋山』 (71) が特に注目された。共産党員として郷里の福江町議会議員を長くつとめ,政治や文化一般についての発言も多い。評論集『哄笑の思想』 (66) などがある。『戦国乱世の文学』 (65) ,『維新前夜の文学』 (67) で従来の文学概念を広げた功績も大きい。また,イタリア・ルネサンス文化を研究,訳書に『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』 (54,58) ,『ミケランジェロの手紙』 (95) などがある。

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百科事典マイペディア 「杉浦明平」の意味・わかりやすい解説

杉浦明平【すぎうらみんぺい】

小説家,評論家。愛知県生れ。東大国文科卒。一高在学中は《アララギ》で作歌。東大では,立原道造・寺田透らと創刊した《未成年》に小説を発表した。戦時中よりルネサンス研究を始め,その成果は戦後《ルネッサンス文学の研究》にま崋とめられた。1944年より帰郷,町会議員を2期務めた。《ノリソダ騒動記》などの記録文学で注目を集め,歴史小説《小説 渡辺崋山》で毎日出版文化賞受賞。《維新前夜の文学》《新・古典文学論》など評論も多い。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「杉浦明平」の解説

杉浦明平 すぎうら-みんぺい

1913-2001 昭和後期-平成時代の評論家,小説家。
大正2年6月9日生まれ。戦時中はルネサンスの研究に没頭。戦後郷里の愛知県渥美町にすみ,共産党に入党(のち離党),町会議員を8年つとめる一方,作家活動,評論活動を展開する。昭和47年「小説渡辺崋山」で毎日出版文化賞。著作に「ルネッサンス文学の研究」「ノリソダ騒動記」など。平成13年3月14日死去。87歳。東京帝大卒。

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世界大百科事典(旧版)内の杉浦明平の言及

【ダンテ】より

… ダンテの作品は,約言すれば,政治と文学との激しい葛藤のなかで生み出された。日本においては,明治時代から《新生》と《神曲》を中心に,かなりの翻訳と紹介が行われてきたが,その傾向を大別すると,第1は上田敏を頂点とする純文学的動機によるもの,第2は内村鑑三,正宗白鳥ら宗教的関心に基づくもの,第3は阿部次郎が築こうとした哲学的・倫理的傾向のもの,そして第4にダンテの文学を政治と文学の葛藤の角度から(とくに第2次世界大戦下の日本の状況と照らし合わせて)とらえようとしたもの(矢内原忠雄,花田清輝,杉浦明平ら)となる。《神曲》の翻訳としては,文章表現と文体に問題は残るが,最も原文に忠実で正確なものとして,山川丙三郎訳を挙げねばならない(1984年現在)。…

※「杉浦明平」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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