日本大百科全書(ニッポニカ) 「李真」の意味・わかりやすい解説
李真
りしん
生没年未詳。中国、唐代の画家。徳宗朝の貞元年間(785~804)に招福寺庫院の鬼子母神(きしもじん)像を描くなど、多くの寺院の壁画制作に活躍。周昉(しゅうぼう)と並び称された。京都・東(とう)寺にある『真言五祖像』(のち821年わが国で描かせた二祖像を加え『真言七祖像』として国宝指定)は、写実的な描写で有名であるが、これは、806年(大同1、唐の元和1)空海が唐より帰国する際、師の恵果阿闍梨(けいかあじゃり)が李真をはじめ十余人に描かせ与えたものである。描かれてより1000年以上たつこれら五祖像は、絹地の破れ、賦彩の剥落(はくらく)が甚だしく、元の姿からはほど遠いが、唐時代の絵画作品が少ない現在、唐代の正統的画法を示すものとして貴重である。
[近藤秀実]