明治・大正の美術運動の指導者岡倉天心の著作。英文で書かれ、原題はThe Ideals of the East with Special Reference to the Art of Japan。1903年(明治36)ロンドンのジョン・マレー社から出版された。1902年のインド滞在中に完成されたと考えられ、イギリス婦人ニベディタの序文をもつ。冒頭の文章“Asia is One.”(アジアは一つである)は有名である。インドの仏教、中国の儒教や道教に代表されるアジアの思想を紹介し、西洋の思想に対するその優位を説き、アジアの理想が日本の芸術のなかにいかに結晶しているかを、歴史の流れに従って述べている。西洋の思想や文物のアジアへの流入は、人々の生活や芸術を大いに混乱させており、アジアの再生はアジア自身の理想によるほかはないし、再生に果たす日本の芸術の役割は大きいという天心の主張は、明治後半期の天皇制を中心とした国家主義思想の高揚と密接な関係をもっている。
[影山純夫]
『亀井勝一郎・宮川寅雄編『明治文学全集38 岡倉天心集』(1968・筑摩書房)』
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