校歌(読み)コウカ

デジタル大辞泉 「校歌」の意味・読み・例文・類語

こう‐か〔カウ‐〕【校歌】

その学校を象徴するものとして制定された歌。建学精神理想とする校風などを表し、その学校の一員であるという自覚を高めるなどの目的で、式典のときなどに歌われる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「校歌」の意味・読み・例文・類語

こう‐かカウ‥【校歌】

  1. 〘 名詞 〙 その学校の理想、特長、精神などをもり込んで作詞、作曲され、学生、生徒、児童にうたわせる歌。
    1. [初出の実例]「本校に校歌と唱ふるものあれば」(出典:風俗画報‐二〇九号(1900)本革屋町)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「校歌」の意味・わかりやすい解説

校歌 (こうか)

小・中・高校,大学などの諸学校あるいは幼稚園などで制定された歌曲。幼稚園では園歌と称することもある。おもに学校が制定を企画し,同窓生,学生,教職員などが作詞・作曲する場合が多いが,ときには学校に縁のある有識者,作曲家に依頼して作る場合もあり,また,同窓会が寄贈する場合もある。公式に制定された校歌のほかに,寮歌,応援歌などもあり,それらが公式の校歌に準ずるものとして歌われる場合も少なくない。このようにみると,寮歌や応援歌も広義の校歌の一種である。校歌,寮歌,応援歌など主として学生が愛唱,歌唱する歌曲を学生歌と総称する。

学生歌Studentenlied(ドイツ語)の起源は,中世ヨーロッパで遍歴学生たちの歌った歌謡に発しており,のち18世紀末から19世紀前半にかけて,ドイツでは伝承,新作の学生歌の集成作業が盛んに行われた。中世の学生たちがヨーロッパ各地の大学を遍歴したこと,近世ドイツの大学が学生に転学の自由を許していることなどが,学生たちの全国的団結,同志的結合を強くさせ,とくに18~19世紀に学生団体の結成が進められたという歴史的背景が学生歌の集成を生み出したとみられる。

今日,たとえば甲子園の全国高等学校野球大会などで演奏されるような〈校歌〉は,公式制定校歌の典型的なものである。このような校歌を制定する慣行がいつごろから諸学校に広まったかは,定かでない。小学校についてみれば,たとえば最も早く設立された京都市の小学校の沿革史誌をみても,少なくとも明治期にはとくに校歌を制定したという記録がない。長野県の小学校などでもほぼ同様である。創立記念祭の〈記念式歌〉などが制定された,といった記録があるだけである。中学校高等女学校などでもこの慣行の発生がいつごろか明らかでなく,おそらく府県立中学校,高等女学校などが多く成立する日清・日露戦争間あたりではなかったかと思われる。官立師範学校として古い歴史をもつ東京女子師範学校(現お茶の水女子大学)では,1876年2月に皇后(のちの昭憲皇太后)の下賜した和歌〈みがかすば玉もかがみもなにかせん〉に作曲して校歌とした。これは最も古い校歌の例であろう。しかし男子校である東京高等師範学校(のちの東京教育大学)で,同窓会である茗渓会が校歌《青雲の空に高く》(作詞北原白秋,作曲山田耕筰)を寄贈したのは1931年になってからである。高等教育全体をみると,1890年代以降旧制高等学校の寮歌が学生歌,準校歌として作られ,次いで慶応義塾塾歌《天にあふるる文明の》(1904,作詞角田浩々歌客,作曲金須嘉之進),早稲田大学校歌《都の西北》(1908,作詞相馬御風,作曲東儀鉄笛)などが続々と作られた。また,日清・日露戦争間から陸軍士官学校,幼年学校等の軍関係学校でも校歌が作られた。校歌の歌詞の特徴は,戦前では尚武,貞淑,研学,国家の使命などを盛った漢文調のものが多かったが,戦後は口語体で風土への賛美,母校愛,友情,連帯などを歌いこむものになっている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「校歌」の意味・わかりやすい解説

校歌
こうか

学校が自校の教育方針、校風、地域環境などを歌詞に織り込み、独自に制定して生徒に歌わせる歌。日本でもっとも古いものとしては、東京女子師範学校(現お茶の水女子大学)で、皇后から下賜された和歌を1878年(明治11)式部省楽部の東儀季煕(すえひろ)が作曲し、校歌として歌われた記録がある。その後、1887年ごろから各府県ごとに祝日に歌う歌が府県令で規定され、同時に各学校で校歌も制定されていった。東京下谷区立忍ヶ岡(しのぶがおか)小学校でも、木村正辞(まさこと)(東京帝国大学教授)作詞、上真行(うえさねみち)(宮内省楽部長)作曲の校歌が1893年5月、文部大臣から「儀式用唱歌に供することをうべき」旨通達されている。同年8月12日、文部省が「祝日大祭日歌詞並音譜」を全国の小学校に告示、以後、校歌制定の機運は高まった。当時の歌詞は、修身、忠孝、志気の鼓舞などの教えを掲げるものが多く、儀式以外に歌われることは少なかった。

 1895年旧制第一高等学校(現東京大学教養学部)が寮歌作成の先鞭(せんべん)をつけ、とくに1902年(明治35)作の東寮寮歌『嗚呼(ああ)玉杯に花うけて』が発表され、一般人にまで愛唱され出して以後、校歌は小学校のみならず、上級学校においても盛んに制定され、儀式以外のさまざまな機会にも歌われるようになった。第二次世界大戦後の教育改革の影響で、校歌は荘重なものから口語体の平明なものとなり、長調の4拍子系が多く、児童・生徒中心の学校行事、レクリエーションなどでも歌えるものに変わってきた。

 校歌は日本だけでなく、韓国、中国などアジアの学校にも多いが、欧米ではスクールソングがあり行事で歌われている。最近、インターネット上にホームページを開設する学校も多く、そこでは校歌の歌詞ばかりかメロディまで紹介している例も少なくない。

[榊原烋一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「校歌」の意味・わかりやすい解説

校歌
こうか
school song

各学校が定めた,その学校を象徴する歌。寮歌や応援歌も校歌に準じて扱われることがある。いずれも学校への帰属感や連帯感を高めることが目的。現在日本では,ほとんどの学校で制定されており,学校の行事の際に歌われる。歌詞には,学校の教育目標,沿革,地域性などが盛込まれ,第2次世界大戦後は口語体が多くなっている。校歌を制定する慣行が広まったのは,日清・日露戦争間頃といわれている。欧米の場合,私立学校には中世ヨーロッパの遍歴学生の歌謡を起源とする学生歌はあるが,公立の小中学校で校歌を制定するところは少い。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android