日本大百科全書(ニッポニカ) 「梶山季之」の意味・わかりやすい解説
梶山季之
かじやまとしゆき
(1930―1975)
小説家。朝鮮のソウル生まれ。広島高等師範学校(現広島大学)卒業後、第十五次『新思潮』に参加。ルポ・ライターに転身後、いわゆる週刊誌などの「トップ屋」の代表的な存在となる。1962年(昭和37)産業スパイの非情さを描いた『黒の試走車』で文壇にデビュー、『夜の配当』『夢の超特急』(ともに1963)、『赤いダイヤ』(1962~63)などで時代の寵児(ちょうじ)の名をほしいままにする。『李朝(りちょう)残影』(1963)で第49回直木賞候補。『女の警察』(1967)、『現代悪女伝』(1968)、『せどり男爵数奇譚(たん)』(1974)、『血と油と運河』(1975)など膨大な作品群を残し、75年(昭和50)取材先の香港(ホンコン)で客死した。昭和一桁(ひとけた)生まれの最後の無頼派的な文士といわれ、「戦後文壇の自爆者」(磯田(いそだ)光一)の評を生む。
[伊藤和也]
『『李朝残影』(講談社文庫)』▽『『赤いダイヤ』上下(角川文庫)』▽『『梶山季之自選作品集』全16巻(1972~73・集英社)』