時代小説(読み)じだいしょうせつ

  • じだいしょうせつ ‥セウセツ
  • じだいしょうせつ〔セウセツ〕

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

時代設定をおもに江戸時代におきながら,歴史的事実や史料にとらわれない娯楽小説。髷物 (まげもの) ,チャンバラ小説などと呼ばれ,かつては大衆小説の主流であった。純文学が西欧文学の影響のもとに出発したのに対して,時代小説の源流は江戸時代の浪花節 (なにわぶし) や,講談などに求められる。特に,明治末期から大正中期にかけて少年向けに刊行された,玉田玉秀斎とその家族の執筆による「立川文庫」は,その後の時代小説の読者を開拓したといえよう。型式や表現手法のうえで,いろいろな実験が試みられ,文章スタイルが「です=あります」調が,その本流であったという説を成す評者もいる。初期の代表作品には白井喬二『富士に立つ影』,直木三十五『南国太平記』,大仏次郎『照る日曇る日』,吉川英治『鳴門秘帖』,林不忘『丹下左膳』などがある。ほかに,岡本綺堂や野村胡堂の捕物帖,長谷川伸や子母沢寛の股旅物,国枝史郎や角田喜久雄の伝奇物などがある。なかでも,中里介山の『大菩薩峠』は異色の作として屹立 (きつりつ) している。第2次世界大戦後,GHQ (→連合国総司令部 ) による封建性の指摘など,文化統制にもあって一時停滞した時期もあったが,やがて村上元三,山手樹一郎,山岡荘八などの登場により復興した。 1965年以降,多数の大衆誌紙が創刊される頃には,五味康祐,柴田錬三郎らが活躍。その後,山田風太郎,南条範夫,池波正太郎,藤沢周平,津本陽を輩出した。

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 時代物の小説。古い時代の事件や人物などを素材としたロマンチックな筋の展開を主とする通俗小説。史実を重んじる歴史小説に対し、大衆小説の一分野として髷物(まげもの)、ちゃんばら物とも呼ばれる。
※小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉上「我国の小説は概(おほむ)ね往昔物語即ち時代小説(ジダイセウセツ)ならぬは稀なり」

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世界大百科事典内の時代小説の言及

【大衆文学】より

…この命名者は一般には白井喬二だとされているが,白井みずからは,〈大衆〉という言葉を民衆と同義に使ったのは自分だが,それに文学をつけたのは自分ではないと否定している。
[成立と多様化]
 大衆文学は成立当時,時代小説だけを指していわれていた。それは〈書き講談〉〈新講談〉〈読物文芸〉〈大衆文芸〉〈大衆文学〉と呼称が推移した過程でより明確になっていったが,基本的には近世以来の庶民文芸の伝統を復活しようとする意図の現れであり,その中核となった二十一日会の構成もまた時代小説の書き手にかたよっていた。…

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