日本大百科全書(ニッポニカ) 「植物季節」の意味・わかりやすい解説
植物季節
しょくぶつきせつ
気候や気象の季節的な移り変わりに応じて植物が示す生活現象の変化。四季の気温変化が大きい温帯では、植物の季節性はとくに顕著である。四季の変化の小さい熱帯でも、乾季と雨季の交代に応じた植物季節がみられる。観測の対象とされる現象は、発芽、開花、開葉、紅葉、落葉などの初めおよび終わりである。わが国では1886年(明治19)に生物季節(動物季節を含む)の観測法の基準が決められた。ウメ、サクラ(ソメイヨシノ)、ヤマツツジ、ススキの開花日、イロハカエデの紅葉日などの調査により、それぞれの地方の気候が比較できる。
植物季節は、植物の反応からみた季節であり、ある期間の気象要素(主として気温)の積算された効果を反映する。気象測器による観測と併用すれば、局地気候の推定のためにも利用できる。適当な指標植物を選ぶと、農業における適地適作の原則に応じた土地利用法の判定に役だつ。また、播種(はしゅ)など農作業の適期の決定、病虫害の発生予察、冷害など気象災害の発生予想など、農業面での利用価値は大きい。このほか、予防医学面では、花粉症の発生予測に、風媒花などの花粉の飛翔(ひしょう)時期を示す花粉カレンダーが用いられている。
[岩城英夫]