ソメイヨシノ(読み)そめいよしの

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソメイヨシノ」の意味・わかりやすい解説

ソメイヨシノ
そめいよしの / 染井吉野
[学] Cerasus × yedoensis (Matsum.) Masam. et Suzuki
Prunus × yedoensis Matsum.

バラ科(APG分類:バラ科)の落葉高木オオシマザクラエドヒガン雑種で、明治初年に東京・染井(現在の豊島(としま)区巣鴨(すがも)付近)の植木屋から売り出されたサクラである。初めはヨシノザクラとよんでいたが、奈良県吉野山のヤマザクラと混同されやすいので、藤野寄命(帝室博物館員)によりソメイヨシノと名づけられた。4月の初め、葉の出る前に、径3~3.5センチメートル、淡紅白色の花が開き、各地にもっとも広く植栽され、花見の主体になっている。花弁は広楕円(こうだえん)形で頂部に切れ込みがあり、萼(がく)と柄には細毛が多く、花柱には開出毛がある。葉は互生し、楕円形または広倒卵形、長さ約8センチメートルで先は鋭くとがり、縁(へり)に鋸歯(きょし)があり、裏面と葉柄には細毛がある。果実はまれにつき、5~6月に赤紅色から紫黒色に熟す。ミシマザクラ、アマギヨシノなど近縁の品種もつくられ、北アメリカでソメイヨシノの実生(みしょう)から選出した品種アメリカはアケボノともよばれ、淡紅色の花をつける。

小林義雄 2020年1月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ソメイヨシノ」の意味・わかりやすい解説

ソメイヨシノ(染井吉野)
ソメイヨシノ
Prunus yedoensis

バラ科の高木。江戸幕末に江戸染井の植木屋から出た園芸種で,明治初期から日本各地に広まった。エドヒガンとオオシマザクラの雑種と考えられている。生長が速く,花つきがよくて美しいため,現在では全国いたるところに広く栽植されている。幹は高さ 7mに達するが,数十年で生長を止め樹齢は短い。花は4月上旬に,葉が出る前に多数密集して咲く。径 3cm内外で花弁は5枚,淡紅白色ないしは白色で先端が浅くくぼむ。核果球形で径7~8mm,紫黒色に熟するが結実する率は低い。済州島によく似たサクラの自生が知られるが,これが直接のもとではなく,おそらく別起源の雑種であろう。

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