樹木をはじめ食用・飲用植物に至る広範囲な植物への宗教的態度をさす。これらは神話に代表される観念の世界で語られることもあれば、儀礼という顕在化した姿に表出する場合もある。たとえば『三国遺事』には、古朝鮮の始祖檀君(だんくん)の父にあたる桓雄(かんゆう)が、神檀樹の下に降臨したという神話が載っている。こうした樹木信仰の最たるものは世界樹の信仰であろう。アルタイの神話では、大地のへその上、万物の中心にもっとも高いモミの巨木がそびえ、最高神の住居にまで達していると語られている。さらにシベリア・タタールの神話では、地下界にも同じような世界樹があるとされ、サハ(ヤクート)の場合、世界樹が生命の息吹を与える性格を有している。この生命の樹(き)に関する観念は古くから存在しており、『旧約聖書』、インドの『リグ・ベーダ』、イランの伝説と広い分布をみせている。現代アフリカでもヘレロの人々は生命の樹の信仰をもち、ヌエルやサンダウェの社会でも、人間の始祖が1本の樹から生まれたと考えている。
一方、ドイツの民族学者イェンゼン(1899―1965)がハイヌウェレ型と名づけ、殺された神の死体から作物が発生したという神話も、起源を説くという意味では植物崇拝の一部とみなしてよかろう。ニューギニアのマンド・アニム人の間ではバナナとココヤシが、セラム島のベマーレ(ウェマーレ)人、南アメリカのウィトト人、南カリフォルニアのネイティブ・アメリカンの社会でも、有用植物の発生が儀礼を伴って表現されている。
農耕儀礼との関連も見落とせない。日本では、旧正月のころに豊作を祈願して、成熟した穀物や餅(もち)を飾る予祝的な祭り、稲刈りの時期に行う収穫儀礼とが各地でみられる。これらは東南アジアの稲作地帯にも広く分布するが、インドのムンダ人のように、穀物に霊が存在し、しかもそれが逃亡しやすいとする信仰は興味深い。
[関 雄二]
『A・E・イェンゼン著、大林太良他訳『殺された女神』(1977・弘文堂)』
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