日本大百科全書(ニッポニカ) 「楡林」の意味・わかりやすい解説
楡林
ゆりん / ユイリン
中国、陝西(せんせい)省北端の地級市。2市轄区、綏徳(すいとく)など10県を管轄する(2016年時点)。常住人口335万1437(2010)。内モンゴル自治区のオルドスの砂漠と黄土(こうど)地帯との境界にあり、つねに北方の遊牧民族と漢民族との接触地点となり、秦(しん)の長城もここを通っていた。黄河(こうが)の支流、無定河(むていが)の上流にあり、オルドス高原を越えて河套(かとう)平原へ至る交通路の要衝として、付近には県や軍事拠点が設けられたが、いずれも北方異民族の侵入で興廃を繰り返した。明(みん)代には長城を現在の位置に修築し、楡林衛が置かれて長城防御の重鎮とされた。清(しん)代に県となった。1988年市制施行。
主要な産業は牧畜で、毛織物、じゅうたんなどが特産品として有名であるが、灌漑(かんがい)用水による農耕の拡大も明代以来進められている。近年は石炭採掘も盛ん。神延線(神木(しんもく)―延安(えんあん))、包神線(パオトウ―神木)、神朔線(神木―朔州(さくしゅう))が市内を通る。2008年には楡林楡陽空港が開港した。市街北部の紅石峡は名勝地として知られる。
[秋山元秀・編集部 2017年7月19日]