地表面にみられる,多少とも対称性をもった幾何学模様の総称。英語ではpatterned ground(模様地面)といい,実体をよく表しているが,ドイツ語の方が古くから使われており,日本ではその訳語が定着している。構造上は乾燥地域にもみられるが,周氷河地域に最も普遍的に分布するため,とくに断らないかぎり,凍結・融解作用によって生じた周氷河地形の一種として扱われる。土中の礫(れき)がより分けられて模様を作っているものを礫質構造土,土中に礫を含まないか,あっても淘汰が不良で,土が模様を作っているものを土質構造土,植物に覆われたものを植被構造土として区別する。さらに平面形によって円形土,多角形土,網状土,縞状土,階状土に分け,双方を組み合わせて礫質階状土,土質多角形土,植被円形土などと呼ぶ。その大きさは凍結深度の浅い熱帯山地や,日本のような温帯山地で小さく,直径または幅が数cmから1m程度のものが多いが,アラスカやシベリアの永久凍土地帯には,1辺が数十mの巨大多角形土が分布する。構造土の大きさは,土の性質や含水量にも左右されるので,それを単純に寒さの指標とするわけにはいかない。円形土や多角形土は基本的には,地面の凍結による凍結割れ目の形成,凍上および融凍時の不等沈下,凍結・融解の反復による土壌物質の水平・垂直方向への差別的な移動,それに伴う構造土の細胞の中心への突き上げによって,平たん地に生じる。斜面ではそれらの作用にクリープ,ソリフラクション,流水の作用が加わり,網状,縞状あるいは階状に形を変える。それに積雪,風,土質,植生,温度変化と凍結様式などの諸条件がかかわるので,構造土の成因は複雑である。礫質構造土の礫は,土中にあったものが,凍結進行時に凍結した周囲の土に捕捉され,凍着・凍上によって地表に押し出されて,凍結割れ目や周縁のくぼみに落ち込んだものである。
→周氷河地形
執筆者:小疇 尚
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
地表面にみられる対称的、幾何学的な模様の微地形。平面形態によって円形土、多角形土(ポリゴンpolygon―亀甲土(きっこうど))、方形土、網状土、条線土、階状土に区分され、構成物質によって礫(れき)質(淘汰(とうた))と土質(不淘汰)とに分けられる。大部分は周氷河地形であり、凍結・融解の繰り返しによる土壌物質の移動や、凍結による表層部での割れ目の形成によって生じる。永久凍土帯では幅が数十メートルにも及ぶ大規模な多角形土がつくられる。日本では森林限界以上の高山帯にみられ、現在でも形成中の構造土は直径数センチメートルから1メートル内外のものが多い。乾燥地域では、乾燥や湿潤の繰り返しに基づく土壌の収縮や膨張によって、ギルガイgilgaiとよばれる構造土がつくられる。
[小野有五]
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…永久凍土地帯には次のような特異な地形や氷塊が見られる。(1)構造土 地表面に見られる規則的な凹凸模様の繰返しで,模様の形状から円形土,網状土,多角形土,階段土,線伏土に分けられる。(2)氷楔 活動層と永久凍土との境界面から下に向かって頂点を下に,地中にくさびを打ち込んだ形の氷塊。…
…地表下数cmで動きはかなり遅くなり,数十cm以下にはほとんど及ばない。前面の舌状にのびた,ソリフラクションロウブとよぶ高さ数十cmの微起伏や,小さな草むらや岩塊などにせき止められて,階段状の構造土を作る。ソリフラクションは,斜面全体に生ずるので,大きくみると滑らかな斜面をもつおだやかな地形をつくりやすい。…
…また,氷河周辺地域では,地下の水分,あるいは雪による周氷河作用がみられる。周氷河作用により土壌のあるところでは凍土層がみられ,その上部はくり返される融解・凍結によるじょう乱を受け,地表では岩屑の流動による構造土ができる。そして山の斜面ではソリフラクションsolifluctionといわれる岩屑の重力による流動が生じ,面状に浸食される現象もともなう。…
※「構造土」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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