翻訳|solifluction
水に飽和された表層土が,全体としてゆるやかに斜面を流れ下る現象。寒冷で湿潤な両極地方の島々で,20世紀の初頭に初めて詳しく観察され,ラテン語のsolum(地面)+fluctuo(ゆらぐ)があてられた。流土の訳語が使われることもある。樹木のない高緯度地方や山地などの周氷河地域では,冬の間多量の水を吸い上げて凍結し凍上していた地表が,春になって融解するとき,下層に残る凍土が水を通さず,それに融雪水が加わるので過飽和状態になりやすい。そのため,表土の動きを妨げるしっかりした樹木の根がないと,わずかな傾斜でも表層土が流動する。しかし水は潤滑材として働いているだけで,水が土を流しているわけではない。動きは地表で最も速く,年数mmから数cmであり,傾斜が20度ぐらいのところで凍上しやすい土の場合には年数十cmに達することもある。地表下数cmで動きはかなり遅くなり,数十cm以下にはほとんど及ばない。前面の舌状にのびた,ソリフラクションロウブとよぶ高さ数十cmの微起伏や,小さな草むらや岩塊などにせき止められて,階段状の構造土を作る。ソリフラクションは,斜面全体に生ずるので,大きくみると滑らかな斜面をもつおだやかな地形をつくりやすい。北海道ののびやかな景観は,氷期のソリフラクションによるところが大きいと考えられている。なお,ソリフラクションの語は,凍上とは無関係な,水で飽和された表土の緩慢な流動にも拡大して使用されることがある。
→周氷河地形
執筆者:小疇 尚
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…周氷河作用により土壌のあるところでは凍土層がみられ,その上部はくり返される融解・凍結によるじょう乱を受け,地表では岩屑の流動による構造土ができる。そして山の斜面ではソリフラクションsolifluctionといわれる岩屑の重力による流動が生じ,面状に浸食される現象もともなう。日本では氷食地形は,更新世の氷河遺跡である日本アルプスや日高山脈に残されているし,周氷河作用は日本アルプス,高緯度の東北地方北部以北にあったと考えられる。…
…周氷河作用により土壌のあるところでは凍土層がみられ,その上部はくり返される融解・凍結によるじょう乱を受け,地表では岩屑の流動による構造土ができる。そして山の斜面ではソリフラクションsolifluctionといわれる岩屑の重力による流動が生じ,面状に浸食される現象もともなう。日本では氷食地形は,更新世の氷河遺跡である日本アルプスや日高山脈に残されているし,周氷河作用は日本アルプス,高緯度の東北地方北部以北にあったと考えられる。…
※「ソリフラクション」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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