同じ学校の卒業者によって構成され,相互の連絡交流や親睦,母校への援助,および研修などを機能とする団体。他校出身であっても相当長期間その学校に教職員であったものを特別会員,名誉会員に加え,また現職教職員を顧問とする例がある。〈同窓〉は同一の師について学んだ友人たちを意味する漢語で,最も早く結成されたものの一つである〈茗渓会〉(東京師範学校,東京高等師範学校)発足の1882年当時,すでにこの語が用いられていた。校友会,学友会などのほか,学校所在地の風物や建学理念などにちなんだ独特の名称を付す場合が多い。近代学校制度の成立とともに発生したが,その当初,とくに専門教育学校では,特定分野の先導的人材となることが期待された当該校卒業者の研修や,その専攻分野についての啓蒙活動の展開などを直接の目的としていたが,学校制度の拡大・定着とともに,卒業者相互の交流・親睦を主目的とするようになった。町村部の小学校の場合には,補習教育や地域青年の組織・指導など,卒業者に対する学校当局側のアフター・ケアを行う機関であった場合も少なくない。明治後半から大正期にかけて,小学校同窓会を事実上の母体にして,地域青年会,処女会(女子青年会),図書館,実業補習学校などが作られていった地方も多かった。中等教育・高等教育の学校では,同窓会における交流・親睦が,同時に営業,就職,昇進,子どもの結婚など,会員相互の現実利益をもたらす手段として用いられる場合もある。同一校出身者としての共同体的な連帯や閉鎖的な現実利益の保証により,歴史が古く卒業者が特定または多くの社会分野に進出している学校では,同窓会を主軸として〈学閥〉が形成されるようになる。アメリカをはじめ他の諸国にも類似の卒業者団体が存在するが,学校制度により特定の社会階層や社会分野を作り上げていった日本においては,共同体的一致の意識や行動パターンの根強い国民性とあいまって,同窓会がとくに盛行しかつ強力であるといえる。現在では,学校のほかに,企業や地域団体などにおいても類似の組織をもつ場合が少なくない。
執筆者:佐藤 秀夫
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校友会が大学側のイニシアティブによる卒業生の組織であるのに対して,同窓会は同時期に卒業した者が集まる自主的な非営利団体である。一般に同窓生の間の親睦と懇親を通してその動静を明らかにすることや後輩への支援を目的に組織され,校友会とはしばしば補完的関係にある。同窓会のなかには,筑波大学や東京学芸大学のように,一般社団法人の法人格を取得しているものもあるが,大半の同窓会はいわゆる「権利能力なき社団」として活動している。同窓会のおもな活動は総会や幹事会の開催,会誌の発行,総会やクラス会あるいは在校生への奨学金の給付に必要な会費の運用などである。現在,ほとんどの同窓会がウェブサイトやフェイスブックなどを運営しており,会合や行事,会員に関するニュース,各種顕彰,課外活動の援助,施設利用の案内などに関する告知を行い,個人情報の登録や変更,また送付手続きの停止の手続きなどを行っている場合が多い。
著者: 松浦寛
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