権利をもつことのできる能力ないし適格性を意味する法律上の概念で,19世紀前半にドイツ普通法学によって構成された。人間は,出生から生物学的意味での死亡(失踪宣告による擬制死亡を含まず)に至るまで,性別,年齢,門地,個々の身体的・精神的能力等々の差異をいっさい問われることなしに,すべて,完全かつ平等の権利能力を認められる(ドイツ民法1条,日本民法1条ノ3)。そして,このことの実質的・社会的意義は,権利能力があってはじめて,すべての人間が〈人〉としての法律上の保護を完全かつ平等に受けうる,という点にある。すなわち,現在,たとえば,われわれが交通事故にあって負傷すると損害賠償請求権を取得でき,相手が賠償金を任意に支払わなければ裁判所の強制力をかりて支払わせることもできる。ところが,もし権利能力がないとすると,もつことのできないものは取得もできず,損害賠償請求権を取得してその支払を裁判上強制することもできない(いわば切捨て御免)ことになる。なお,法人にも権利能力は認められるが,それは,多数当事者の法律関係の処理(社団法人の場合)ないし一定の目的にささげられた財産の管理(財団法人の場合)を簡明化・確実化するための法技術としてであるにすぎず,その認められる範囲なども法令等による制限を受ける。
→行為能力
執筆者:須永 醇
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法律上、権利義務の主体となることのできる地位または資格。法的人格ともいう。近代法において権利能力を有するものは、自然人と法人である。まず自然人については、歴史的にはかならずしもすべての者が権利能力を有していたわけではなかった。たとえば、古代の大家族制度の下における奴隷は権利能力を有していなかったし、中世封建社会の農奴は限定された権利能力しか有していなかった。しかし、近代法の下では、すべての自然人が完全かつ平等な権利能力を有する(民法1条ノ3参照)。その始期は出生であり、終期は死亡である。次に、法人とは、自然人以外のもの(人の集団である社団または財産の集合体である財団)であって権利義務の主体となることのできるものである。近代法の成立期においては、個人主義的思想を背景として法人は最小限度にしか認められていなかったが、その後の資本主義経済の発達とともに、各種の団体が法人として認められるようになっている。なお、権利能力は行為能力と区別されなければならない。というのは、後者は、法律行為を自ら現実になしうる能力を意味するからである。
[淡路剛久]
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