止血法(読み)シケツホウ

デジタル大辞泉 「止血法」の意味・読み・例文・類語

しけつ‐ほう〔‐ハフ〕【止血法】

外傷などによる出血を止める方法傷口ガーゼなどを当て、その上から包帯を巻く圧迫包帯法、傷口より心臓に近い側の血管を指で押さえる指圧止血法などがある。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「止血法」の意味・読み・例文・類語

しけつ‐ほう‥ハフ【止血法】

  1. 〘 名詞 〙 創傷からの出血を止める方法。指圧法、圧迫法などの応急的な一時的止血法と、医師手術などの際に行なう永久的止血法とがある。
    1. [初出の実例]「Haemischesis 止血法」(出典:医語類聚(1872)〈奥山虎章〉)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「止血法」の意味・わかりやすい解説

止血法
しけつほう

創傷からの出血を止める方法をいう。出血は、動脈性出血、静脈性出血、毛細血管性出血に分類される。このうち、毛細血管性出血は、血液の凝固にかかわる線維素溶解系に異常がなければ、自然止血が期待されるもので、出血量は少なく、圧迫止血で止血可能である。静脈性出血は、暗赤色の血液が創部から持続的に流出するもので、頸(けい)静脈、大腿(だいたい)静脈等の太い静脈が損傷されていない限り、圧迫止血で止血可能である。太い静脈からの出血は、その損傷された静脈を縫合、結紮(けっさつ)(血管を縛って血液の循環を止める)しない限り止血は不可能である。動脈性出血は、動脈の破綻(はたん)によっておこるもので、創部からは鮮血色の血液が拍動性に噴出し、出血量は多く、血圧が低下しない限り自然止血は不可能で、止血には結紮、縫合による止血が必要となる。

 止血法は止血操作によって、(1)自然止血、(2)圧迫止血、(3)緊縛止血、(4)結紮止血、(5)血管縫合止血、(6)薬物止血に分けられる。

 自然止血は、放置していても自然に出血が止まることである。圧迫止血は、ガーゼ、清潔なタオル等で直接出血部位を圧迫して止血させる止血法で、安全で止血効果も確実なため、もっともよく用いられる。毛細血管性出血、頸静脈大腿静脈等の太い静脈以外の静脈性出血では、圧迫止血によって永久止血効果が得られる。なお、動脈性出血の場合には、圧迫止血では永久的な止血効果は得られないが、圧迫している間は一時的な止血効果が得られるため、緊急止血処置として頻用されている。緊縛止血は、四肢の動脈性出血の場合に用いられる方法で、出血部位より心臓に近い部位を紐(ひも)状のもので縛り、動脈血流を遮断することによって一時的な止血効果を得る方法である。ただし、長時間にわたって緊縛止血を施行した場合には、血流が完全に遮断されるため、末梢(まっしょう)側は壊死(えし)に陥ることがある。動脈性出血の場合は、前述した圧迫止血、緊縛止血を用いて一時的止血処置を施行するが、動脈性出血を永久的に止血するときには結紮止血、血管縫合止血がとられる。結紮止血は、損傷した血管を糸で結紮して血流を遮断させ、止血を得る方法であり、血管縫合止血は、損傷した血管壁を縫合修復することによって止血させる方法である。薬物止血法とは、薬物によって止血を行うものであり、局所的に用いられる薬物には、ゼラチン(「スポンゼル」等)、酸化セルロース(「オキシセル」等)、トロンビン末、アドレナリンノルアドレナリン等がある。これらは、直接、局所の血液凝固能を促進させたり、損傷した血管を収縮させることによって止血を得るものである。そのほかに、ビタミンK、カルバゾクロム製剤(「アドナ」等)、トラネキサム酸(「トランサミン」等)の止血剤の全身投与があるが、これらは、長期的な止血効果は期待されるものの、緊急の止血効果は薄い。

[高橋教雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

六訂版 家庭医学大全科 「止血法」の解説

救命・応急手当の基礎知識
止血法
(健康生活の基礎知識)

 バイスタンダーの救命手当のもうひとつの柱が「止血法」で、主に外傷による外出血がある場合に行う手技です。

 外傷などで体内の血液を急速に大量に失うと全身の血液の循環が悪くなって、「出血性ショック」という重篤な状態になり、生命に危険が及びます。

 出血性ショックとは、

・手足が冷たく、湿っている

・顔色が真っ青

・冷汗をかく

・脈が速く弱くなる

・目がうつろになる

・表情がぼんやりしている

・無気力、無関心になる

・うわごとをいっている

などの症状が現れる状態です。

 このようなショック症状が現れたらもちろん、現れなくても出血をしたら、ただちに止血しなければなりません。

 なお、大きな事故などで出血と意識障害の両方があり、血液が傷口からピューピューと噴出している場合は止血を優先します。出血が激しくない、または一応止血した状態では前述の心肺蘇生法を行って救急車の到着を待ちます。

 止血法には、直接圧迫止血法や止血帯法、間接圧迫止血法などがありますが、最も一般市民にすすめられているのは、直接圧迫止血法(図10)です。

●直接圧迫止血法

❶傷口に清潔なガーゼやハンカチ、布などを当て、その上から手で、あるいは包帯や三角巾などを巻いて、血が止まるまで圧迫し続ける。

・片手で止まらない場合は、両手で圧迫する

・手足などの傷口は、心臓より高く上げておく

❷ガーゼなどの当て布に血液が滲んできたら、もとのガーゼを取り除かずに、その上から別の当て布を重ねてのせ、圧迫し続ける。

※感染予防のため、血液には直接触れないこと。できればゴム手袋やビニール手袋を使用する。



止血法
しけつほう
Hemostasis
(外傷)

●直接圧迫止血法

 出血部分を直接ガーゼや布きれなどで強く押さえます。通常、ほとんどの出血はこの方法で止血することができます。ガーゼなどは、清潔で厚みがあり、傷口を十分おおうことができるものを使用します。傷口にガーゼや布きれを当てたあと、その上から圧迫を加えます。

 片手で止血できない場合は、両手で圧迫したり、体重をかけて止血します。傷口のガーゼを包帯や三角巾で強く圧迫包帯する方法もあります。

●止血帯法

 止血帯法は、手足の太い血管からの出血で直接圧迫が困難な場合に用います。

 幅の広い(3㎝以上)三角巾や包帯、スカーフなどを用いて、出血している傷口から心臓寄りの上腕か大腿に巻きます。針金や細いひもを使うと、巻いた部分の組織を損傷させてしまうので使用しないでください。

 止血帯を強く巻いて止血の効果を観察しますが、不十分な場合は、止血棒を用いてさらにしばりあげる必要があります。止血帯を軽くしばり、その輪のなかに止血棒をとおし、これを回して締めあげます。出血が止まったら、それ以上きつく締めないように気をつけます。

 止血帯を使う時は、組織の障害を防ぐために、30分ごとにゆるめて血流を再開させます。出血部位から血液がにじみ出る程度に1~2分ゆるめます。この間は直接圧迫止血を行い、出血を防ぎます。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android