アメリカが武器を他国に貸与する際の手続を簡略化させる法律(レンドリース法)。
第二次世界大戦中の「1941年武器貸与法」はF・D・ルーズベルト大統領のもとで成立した。ナチス・ドイツと戦うイギリスなどを支援するために制定された。同法は当時、ドイツと激戦を繰り広げたソ連をアメリカが支援するためにも活用されたほか、日本と戦っていた中国(中華民国)の支援にも適用された。
それまでアメリカは中立法のもと、他国への軍事支援についてきわめて消極的だったが、この法律をきっかけにアメリカの防衛上、重大な関連がある場合、中立の立場をとっていても、武器などを供与できるようになった。本格的な参戦前から連合国を軍事的に支援していくようになったため、アメリカは「民主主義の兵器廠(しょう)」としての立場を築いていく。さらに大きな意味をもつのは、この法律をきっかけにそれまでの「孤立主義」から「国際主義」へとアメリカが歴史的に転換していくきっかけとなったことである。
この法律を81年ぶりに復活させたのが「2022年武器貸与法」である。この法律は、ロシアのウクライナ侵攻に対抗するために、ウクライナや東ヨーロッパ諸国などへの迅速な支援のために、2022年5月9日に成立した。ただ、たとえば同月には400億ドルに及ぶ包括的な武器支援、経済支援の法案も成立しており、2022年末までは実際の支援の多くは別の立法措置で対応している。
この法律が成立した5月9日は、第二次世界大戦におけるロシアの対ドイツ戦勝記念日である。この法律の復活は、かつてナチスを倒すために使われた法律が、今度は支援をしたロシアに対して使われるという象徴的な意味合いのほうが強い。
[前嶋和弘 2023年2月16日]
第2次大戦における連合国向け援助に関し,1941年3月11日にF.D.ローズベルト大統領主導下に制定されたアメリカの法律。これにより大統領は,アメリカの防衛と重大なかかわりがあると認めた場合,たとえ法的に中立の立場をとっていても,他国に武器や食糧を供与できる権限を与えられ,参戦を待たずして連合国に戦争協力する道が開かれた。当初,同法はイギリスにのみ適用され,その後同年6月中国,11月にはソ連にも適用され,さらにベルギー,ポーランド,ギリシアなど多くの連合国諸国に拡大された。同法により大戦中アメリカが供与した物資等の総額は500億ドルを超え,うち310億ドルがイギリス,110億ドルがソ連に与えられ,連合国側の勝利に不可欠の貢献をなした。しかし,終戦直前の45年4月トルーマン大統領によって同法の対ソ適用が一方的に中断され,それが米ソ冷戦の発端の一つの契機となった。
執筆者:進藤 榮一
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第二次世界大戦中,アメリカの防衛にとり重要な国に武器,軍需物資を貸与する権限を大統領に与えた法律で,アメリカがまだ参戦していない1941年3月に成立した。前年暮れのチャーチル英首相の要請に対し,F.D.ローズヴェルト大統領が応えたもので「民主主義の兵器廠(しょう)」となるという彼の構想の具体化であった。終戦までにイギリス,ソ連,中国など多くの連合国に500億ドルを超える物資を事実上供与し,連合国の勝利に不可欠な貢献を果たした。
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