佐藤春夫の第1詩集。1921年(大正10)刊行当時までの詩約100編の中から23編が選ばれている。少年期から青年期にかけての浪漫的な恋情を歌った〈少年の日〉〈ためいき〉,谷崎潤一郎夫人の千代子との悲恋を歌った〈水辺月夜の歌〉〈或るとき人に与へて〉など,今なお愛誦されている珠玉のような抒情小曲を収める。ほとんどが,今様や《梁塵秘抄》など伝統歌謡の技法を意識的にとり入れた古風な文語定型詩で,作者自身〈昨日の思ひ出に僕は詩人であり,今日の生活によって僕は散文を書く〉とも語っており,ことさら古風な体裁がとられているが,歌われている人間心理はまさしく現代人のものである。なお,特に有名な〈秋刀魚(さんま)の歌〉は千代子への愛憐を歌ったもので,次の詩集《我が一九二二年》(1923)に収められている。
執筆者:河村 政敏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
佐藤春夫の処女詩集。1921年(大正10)7月、新潮社刊。青年時代から書きためた15年間約100編の作品から23編を収録。「紀(き)の国の五月なかばは/椎(しい)の木のくらき下かげ」で始まる『ためいき』や『少年の日』は、若き日の恋情の高まりを示し、「せつなき恋をするゆゑに/月かげさむく身にぞ沁(し)む」で始まる『水辺月夜の歌』や『或(あ)るとき人に与へて』は、谷崎潤一郎(たにざきじゅんいちろう)夫人千代子への悲恋を歌い上げる。「古風なる笛をとり出(い)でていま路(みち)のべに来(きた)り哀歌(かなしみうた)す」(自序)とあるように、日本の伝統歌謡の調子を踏まえ、五七調・七五調の文語定型詩のなかに、人間の恋情の輝きと揺れとがみごとに定着している。
[中島国彦]
『『日本の詩歌16 佐藤春夫』(中公文庫)』▽『『日本詩人全集17 佐藤春夫』(1967・新潮社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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