段ボール(読み)ダンボール

デジタル大辞泉 「段ボール」の意味・読み・例文・類語

だん‐ボール【段ボール】

波状に成形した中心なかしん紙の片面または両面厚紙をはり合わせた板紙包装の箱にする。

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精選版 日本国語大辞典 「段ボール」の意味・読み・例文・類語

だん‐ボール【段ボール】

〘名〙 (ボールはboard から。→「ボールがみ(━紙)」の語誌)
① 波状に成形した中心(なかしん)紙の片面または両面に平らな厚紙を貼り合わせて作った板紙。多く、箱などにする。
※生々流転(1939)〈岡本かの子〉「その上にそっと褐色の段ボール紙を戴せます」
② ①でつくった箱。段ボール箱
※不意の声(1968)〈河野多恵子〉「ピアノの前にいた先生がそのあとへ二つの空のダンボールを置こうとしているのだが」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「段ボール」の意味・わかりやすい解説

段ボール
だんぼーる

波形に成形した中芯(なかしん)原紙の片面または両面に段ボール用ライナーを張ったもの。片面、両面、複両面、複々両面の各段ボールなどがあり、また段の種類には段数によってA、B、CおよびE段などがある。組み立てて各種段ボール箱などに用いる。用途により個装、内装および外装用の段ボールなどに分類される。

 段ボールは1870年アメリカとドイツで発明された。これは波状鉄板やクリーニングで用いるしわ付けロールにヒントを得たのだといわれている。日本では約40年下って1909年(明治42)割れやすい電球の包装材料を求めていた三成社(レンゴーの前身)の井上貞治郎および吉田栄吉(豊進社)が輸入段ボールにヒントを得、手廻しロールで波型紙をつくり平らな紙に糊(のり)付けするのに苦心しながら製作したのが始まりという。

 段ボールの中芯用原紙は強度の順にA、BおよびCの三階級に分かれ、いずれも坪(つぼ)量125グラム/平方メートルの板紙に抄(す)かれる。かつて中芯用原紙としては、〔1〕中性亜硫酸セミケミカル法で木材チップから得られたパルプを主原料とした強度の強いパルプ芯、〔2〕藁(わら)パルプと古紙の再生パルプを主原料とする黄芯、〔3〕古紙の再生パルプから得られる特芯が規定されていたが、現在では3種は統合され、性能(強度)で分類される。一般にチップ芯は長網(ながあみ)抄紙機で抄かれ、他は円網(まるあみ)抄紙機で抄かれる。

 段ボール用ライナーも強度の順にA、BおよびCに分けられ、用途別に外装用ライナーと内装用ライナーおよびその他ライナーがあり、外装用ライナーはとくに大きな強さが求められる。段ボール用ライナーの厚みは坪量180~340グラム/平方メートルで、中芯原紙に比べるとはるかに厚く、また強度も圧縮強さが同等である以外は、いずれもより大きな強さが要求される。未晒(みさらし)クラフトパルプのみで抄紙したものをパルプライナーとよび、強度が強い。また、未晒クラフトパルプと古紙の再生パルプとを原料として抄紙したものをジュートライナーとよぶ。通常、前者は長網抄紙機またはインバーフォームマシンで抄紙し、後者は円網抄紙機またはインバーフォームマシンで抄紙する。段ボールのA、B、CおよびE段は段数を規定するが、その順序は一部不同で、30センチメートル当りA段は34段、B段は50段、C段は40段で、E段は94段が標準段数である。なお個装用の段ボールはおもに使用者の手元に渡る最小単位の物品を包装するための段ボール箱に、外装用ダンボールはおもに輸送用に用いる段ボール箱に、内装用の段ボールは個装をまとめ、それを保護するのに用いる段ボール箱用に、それぞれ用いられる。

 第二次世界大戦後、木材とくに針葉樹資源の枯渇による箱材の不足と、産業界からの包装の合理化の要請により段ボール箱の普及は著しく、輸送用の箱は木箱にとってかわった。そのほか空き箱の再利用や使えなくなった箱からのパルプおよび紙の再生が可能なことなどから、段ボールとその原紙の生産の伸びは経済成長に支えられ目覚ましいものがあった。

[御田昭雄 2016年4月18日]

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改訂新版 世界大百科事典 「段ボール」の意味・わかりやすい解説

段ボール (だんボール)
corrugated board

波形に成形した中芯(なかしん)紙の片面または両面に段ボールライナー(平らな表板紙)をはった紙で,片面段ボール,両面段ボール,複両面段ボールがある(図参照)。段ボールで作った箱が段ボール箱であり,比較的安価で,国内のどこでも短い納期で大量に手配できることや,軽量であるにもかかわらず耐衝撃性,断熱性にすぐれて,組立てや開梱が容易にできることから,木箱に代わって包装資材の重要な地位を占めるようになった。段ボールが日本で初めて製造されたのは1909年であり,電球の包装や化粧瓶の保護に片面段ボールが使用され,段ボールの名称もそのときに生まれた。55年まではその生産は微々たるものであったが,リンゴ木箱1箱分の木材から7箱分の段ボールができるところから,木材資源の利用に関する合理化政策も打ち出され,56年からの20年間に段ボールの生産は20倍以上にもなった。クラフトパルプを100%使用したクラフトライナーは,古紙を混入したジュートライナーに比して強度が高く,4層のライナーからできた複々両面段ボールは重量工業製品の輸出用にも用いられている。しかし日本の段ボール需要の半量は青果物を中心とした食料品包装用が占めている。また,道路事情や荷役事情が改善されたことや経費の節減のために,外装用ライナーの坪量も小さくなり,クラフトライナーで240g/m2から220g/m2へと薄物化している。中芯紙としては広葉樹のセミケミカルパルプを使用したものが高い剛性を示し,波形にした形は外からの衝撃に対して高い抵抗性を示す。波形についてはJISにA,B,Cの規定があり,30cmあたりの波形の段数はそれぞれ34±2, 50±2, 40±2である。段ボールの製造機械はコルゲーターと呼ばれ,中芯紙の段つけと,中芯紙とライナーとのはり合せを行う。接着剤としてはデンプンのりが多く用いられる。耐水性を必要とする段ボールの製造には,合成接着剤を用いたり,ライナーや中芯紙に合成樹脂を混入したりするほか,表面にワックス処理を行う。
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百科事典マイペディア 「段ボール」の意味・わかりやすい解説

段ボール【だんボール】

波状の中芯(なかしん)紙に,平らな表(おもて)板紙(ライナー)を張り合わせたもの。表板紙を中芯の片面に張ったものを片面段ボール,両面に張ったものを両面段ボールという。包装箱,包装用クッションなどに利用。

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世界大百科事典(旧版)内の段ボールの言及

【包装】より


【包装素材】
 昔の包装は,わら,竹,木材といった天然素材をそのままか,あるいは若干加工して使用されていたが,1960年代ころから包装は紙,プラスチック,ガラス,金属などの工業製品を単独,または複合して使うようになった。
[紙,板紙,段ボール]
 紙は柔軟性をもっているので,そのままの形や袋に加工されて包紙や粉体の包装に使われる。とくに美しく印刷されたり,樹脂加工された百貨店やメーカーの包装紙や紙袋は,単に包むという機能のほかに,宣伝媒体としての機能や,ときにはその店の包装や紙袋をもつことで満足感を与えるという機能もある。…

※「段ボール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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