デジタル大辞泉
「母川国主義」の意味・読み・例文・類語
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ぼせんこく‐しゅぎ【母川国主義】
- 〘 名詞 〙 サケ・マスなどの公海を回遊する遡河魚について、母川を有する国が管理権をもつとする主張。
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母川国主義【ぼせんこくしゅぎ】
サケのように,川で生まれて海に下って成長し,産卵のために生れ故郷の川に戻る魚を遡河(そか)性魚類と呼び,そしてこのような川を母川といい,遡河性魚類の漁獲の管理権は母川を有する沿岸国にあるとする考え方を母川国主義という。1982年に採択され,1994年に発効した国連海洋法条約によって条文化された。人工孵化(ふか)と稚魚の放流によって,母川国のみが遡河性魚類の保護・増殖を図ることができるという理由から,母川国に管理権が認められたもの。国連海洋法条約では200カイリ水域内だけでなく,公海上にも母川国の管理権を認めている。そのため母川国主義をとる国々によって漁獲の規制強化が図られ,日本が北太平洋で長く続けてきたサケ・マス漁業は全面停止となった。→栽培漁業
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母川国主義
ぼせんこくしゅぎ
サケ・マスなどの溯河(さくか)性魚種について、それらの魚種が溯(さかのぼ)って産卵する河川を有する国(母川国)が、自国起源の魚種に対して、第一次的な利益と責任を有し、その全回遊域を通じて管理権を行使するという考え方をいう。このような母川国主義は、現在、1977年(昭和52)の日米漁業協定、77年の日米加漁業条約改正議定書、77年の日ソ漁業暫定協定、78年の日ソ漁業協力協定などのなかに取り入れられ、200海里漁業水域の設定と相まって、北洋サケ・マスの日本の操業区域あるいは漁獲割当ては大幅に縮小した。
第三次海洋法会議の準備過程でも、1972年のソ連案、アメリカ案など母川国主義に関する提案がなされ、会議で採択された国連海洋法条約は、溯河性魚種に対し、母川国は、第一次的利益と責任を有し、自国経済水域内で適当な規制措置をとらなければならず、また、関係国と協議ののちに総漁獲可能量を決定することができることなどを規定している。
[水上千之]
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母川国主義
ぼせんこくしゅぎ
motherriverism
母川 (ぼせん) とは,サケ・マスなどのように川で生まれて外洋を回遊し,産卵のために再び生まれた川に戻る回帰性魚類が生息する河川をいう。これら回帰性魚類の漁獲の管理権は,母川所有国にあるというのが母川国主義で,この主張は 200カイリ水域の定着とともに強まり,1982年の海洋法案で条文化された。米露両国は,母川国としての立場から公海でのサケ・マスの漁獲 (沖どり) についても年々厳しい制限を設け,アメリカは 86年に他国の公海での操業を全面禁止,ロシアも 92年から禁止している。
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母川国主義
産卵・ふ化のために生まれた川(母川)に回帰するサケ・マスなどの溯河性(そかせい)魚種については、母川のある国に管轄権があるという考え方。そのため、たとえ公海で漁獲する場合でも母川国の許可が必要、とする立場をとる。溯河性魚種は母川に回帰する習性を利用して沿岸域で漁獲する漁法と、外洋で延縄などで沖獲りする漁法がある。母川国主義は日ソ漁業協力協定の締結交渉で旧ソ連が強く主張。1992年の国際的合意以降、日本の沖獲り操業は基本的に全面停止となっている。
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