栽培漁業(読み)さいばいぎょぎょう(英語表記)fish farming

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

栽培漁業
さいばいぎょぎょう
fish farming

広義には水産養殖も含み,狭義では天然水域において漁業資源を回復あるいは積極的に維持増大(増殖)・育成させた漁業資源を回収する漁業。回帰性の強いサケ,マスの栽培養殖は好例。海洋開発の展開につれて,その一環として取り上げられ,資源管理型漁業の一形態として注目されている。また海洋生物学などの成果を取り入れて,稚魚の生産,放流,飼育管理などを大規模な人工漁礁,人工海藻林を含む人工漁場で行なうなど,水産総合研究センターが日本国内で運営する栽培漁業センターで技術開発,種苗生産などが行なわれている。放流用種苗生産は技術開発が進み,アワビクルマエビマダイなど 200万尾以上の生産が可能となり,一部に放流効果が現れている。(→養殖

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知恵蔵の解説

栽培漁業

魚介類の種苗(稚魚)を大量に生産し、中間育成して海に放流し、成魚漁獲する漁業。種苗生産体制の整備により、アワビ、クルマエビ、ガザミ、マダイなどでは、全国で1000万尾(個)以上の種苗生産が可能となり、一部では放流効果が表れつつある。しかし、一方では大量の種苗放流は海域の生態系を破壊し、生物多様性に影響を及ぼすなどの懸念も示されている。

(榎彰徳 近畿大学農学部准教授 / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

さいばい‐ぎょぎょう〔‐ギヨゲフ〕【栽培漁業】

海に稚魚や稚貝(ちがい)を放し、成長させてから漁獲する漁業。

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百科事典マイペディアの解説

栽培漁業【さいばいぎょぎょう】

人工的に魚卵を孵化(ふか)したり天然に捕らえたりした稚魚を,一定期間飼育したのち海に放流して成長させ漁獲する漁業。サケ・マスの人工孵化放流,アサリ・ハマグリの移殖などが古くから行われていたが,漁業資源が減少するなかで,1963年から瀬戸内海をモデル海域とした大規模な増殖実験事業が発足し,以後全国各地に栽培漁業センターが設置された。クルマエビ,マダイ,ヒラメ,トラフグ,マコガレイなどが中心魚種。1970年代の末以降,操業海域の制限により遠洋漁業が苦境に立たされており,重要な漁業施策の一つとなっている。→魚付林魚礁水産資源養殖
→関連項目磯焼け禁漁期サケ・マス漁業水産業母川国主義マリノベーション構想

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農林水産関係用語集の解説

栽培漁業

水産資源の維持・増大と漁業生産の向上を図るため、有用水産動物について種苗生産、放流、育成管理等の人為的手段を施して資源を積極的に培養しつつ、最も合理的に漁獲する漁業のあり方。

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世界大百科事典 第2版の解説

さいばいぎょぎょう【栽培漁業 fish‐farming】

1961年ころから登場し,63年に水産庁により造られた新語で,一般には水産養殖と水産増殖を包括する用語として使われている。政策面では水産増殖と同義ではあるが,とくに回遊性魚介類の増殖に限定して使われている。栽培という言葉は日本では植物用語となっており,これを漁業用語とすることには異論もあるが,これまでの漁業は大部分が採る一方の生産方式によっており,農業や畜産業のように親から子,子から親になる過程を人間の手で管理しながら再生産するしくみをもっていないところから,漁業の生産体系のなかに〈つくりながらとる〉栽培的な過程を組み入れたいという考え方が,この言葉を誕生させたといえる。

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大辞林 第三版の解説

さいばいぎょぎょう【栽培漁業】

稚魚・稚貝を広い水域に放流し、自然の生産力を利用して成長させ漁獲を行う漁業。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

栽培漁業
さいばいぎょぎょう

水産生物を漁獲するだけの漁業と異なり、有用な生物を人為的な環境下で保護・育成し、のちに自然に戻してその生産力を利用して漁獲の増大を図るシステムで、昭和30年代の中ごろに水産行政の立場からつくられた用語。陸上における農業の栽培技術・方法を主として海の生物に適用し、人為的に水産生物資源の管理を行い、計画的な漁業生産を目ざすもので、「つくる漁業」ともよばれる。[出口吉昭]

国営栽培漁業センターの設置・変遷

1962年(昭和37)ごろの瀬戸内海の年間漁獲量は25万トンで、過去10年間大きな変動がなかった。しかし、漁獲物はマダイ、サワラなどの高価格魚が減少し、カタクチイワシ、イカナゴなどの低価格魚が増加する傾向にあった。そこで瀬戸内海をモデルとして次のような構想がたてられた。
〔1〕高価格魚の増大。
〔2〕漁業に循環再生産過程を導入。
〔3〕栽培漁業センターの設置。
 このうち、〔3〕の栽培漁業センターの事業内容は次のようなものであった。
(1)重要魚貝類の人工孵化(ふか)、稚魚の採捕、飼育、配布および放流。
(2)栽培漁業に関する知識の普及・啓発および漁業者の指導。
(3)栽培漁業に関する技術開発。
(4)放流事業に関する調査および研究。
 これらの目標を達成するため1962年に国の事業場が香川県屋島(やしま)および愛媛県伯方島(はかたじま)に初めて設置された。その後、これらの事業を実施する機関として、関連する12府県および漁業協同組合連合会を会員とする社団法人瀬戸内海栽培漁業協会が1963年に発足した。
 瀬戸内海におけるクルマエビなどの放流事業の成功はほかの海区を刺激し、各地で国の栽培漁業センター設置の要望が高まり、1977年度以降順次設置された。栽培漁業センターの事業場が全国に設置されるに伴い、事業実施機関の瀬戸内海栽培漁業協会は1979年に日本栽培漁業協会に改組され全国的な組織となった。2003年(平成15)日本栽培漁業協会は解散、独立行政法人水産総合研究センターに統合され、事業場は北海道厚岸(あっけし)、岩手県宮古(みやこ)、石川県能登島(のとじま)など16か所に設置された。その後、水産総合研究センター内の水産研究所と栽培漁業センターの一元化など組織改変が行われ、「栽培漁業センター」という名称の国の事業場はなくなった。さらに2016年、水産総合研究センターは独立行政法人水産大学校と統合し水産研究・教育機構となった。2017年時点で、水産研究・教育機構には9研究所および開発調査センターが置かれており、栽培漁業に関する基礎的な技術の開発などを行っている。
 なお、栽培漁業における技術開発の過程は、おおむね次のような順序で行われている。
(1)種の選定。(2)親魚養成。(3)種苗育成。(4)中間育成。(5)資源添加(種苗を中間育成した後に海へ放流し、水産資源量を増大させる)。(6)育成漁場。(7)漁場管理。(8)収穫・効果判定。[出口吉昭]

都道府県、市町村、漁協による推進

各地域の放流種苗の大量生産を担う機関として、都道府県栽培漁業センターが置かれ、アワビ類、クルマエビ、ガザミの放流用種苗、マダイ、ヒラメ、クロダイの放流実験用種苗、養殖用人工種苗などの生産が行われていた。国の栽培漁業センターが水産総合研究センターに統合されるに伴い、都道府県の栽培漁業センターも水産試験場・水産技術センター等に徐々に統合・改変されたが、事業は継続・実行されている。また、ホタテガイ、アワビ、ウニ、クルマエビ、ガザミ、マダイ、ヒラメなどの中間育成や漁場管理などは、多くの市町村や漁業協同組合で行われている。[出口吉昭]
『北田修一著『栽培漁業と統計モデル分析』(2001・共立出版)』

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