毒虫(読み)どくむし(英語表記)venomous insect

精選版 日本国語大辞典 「毒虫」の意味・読み・例文・類語

どく‐むし【毒虫】

〘名〙
① 毒をもち人体に害を与える虫の総称毒物を人体に注入または付着させて、刺痛・皮膚炎などを起こさせる。ドクガイラガハチサソリムカデなど。どくちゅう。
※宇治拾遺(1221頃)三「七八のひさごより、そこらの毒虫ども出て、子どもを刺しくひ」
② 転じて、人に害を与えるもの。また、いやがられ、きらわれるもののたとえにいう。
源平盛衰記(14C前)一七「毒(ドク)虫の種子をば忽に失べきにて有けるを」

どく‐ちゅう【毒虫】

〘名〙 =どくむし(毒虫)
平家(13C前)五「あぶぞ、蚊ぞ、蜂蟻なんどいふ毒虫(ドクチウ)(高良本ルビ)どもが身にひしととりつゐて」 〔高適‐李雲南征蛮詩〕

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デジタル大辞泉 「毒虫」の意味・読み・例文・類語

どく‐むし【毒虫】

毒液をもっていて、人体に害毒を与える虫。ハチ・ドクガ・ムカデ・サソリなどの類。

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改訂新版 世界大百科事典 「毒虫」の意味・わかりやすい解説

毒虫 (どくむし)
venomous insect

人体に直接または間接的に害のある,危険な昆虫やクモ・ムカデ類その他小動物の総称。その害は種類によって軽微のものから激しいものまである。毒はないが毒虫に似ているものも恐れられることが多い。害の種類は吸血,刺傷咬傷(こうしよう)あるいは毒液や臭液の分泌,不潔害,不快害などさまざまである。ノミシラミ,ナンキンムシ,カ,ヌカカブユサシバエウシバエなど,多くの吸血性昆虫による害をはじめ,ハチ・アリ類の毒針による刺傷,アリ類,甲虫類やムカデ・クモ類などの咬傷が知られる。毒液や毒汁を出すものに多くのドクガ類やイラガ類幼虫があり,甲虫のアオバアリガタハネカクシ類,カミキリモドキ・ツチハンミョウ類などもあり,かなり激しい皮膚の炎症を起こし,目に入るとまれには失明することもある。

 また細菌類をまきちらす不潔なハエ類やゴキブリ類は不快害虫として一般には毒虫扱いをされる。そのほかつかまえると口吻(こうふん)で刺されるので痛い,サシガメやマツモムシなどのように反射的行動をとるものもときに恐れられ,また,病原菌を媒介するものもある。
害虫 →不快昆虫
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「毒虫」の意味・わかりやすい解説

毒虫
どくむし

衛生害虫の一部。人体を直接毒針や毒毛で刺したり、かみついたり、毒液を分泌したりして危害を与える昆虫のほか、ムカデ、ヤスデ、ダニなどを含む一般呼称。とくに野外で被害にあったとき、正体不明のものについて「毒虫にやられた」と表現する。実際には、カ、ブユ、ヌカカなどの刺咬(しこう)昆虫、アオバアリガタハネカクシ、カミキリモドキ類などの毒液分泌昆虫、スズメバチ、アシナガバチ、アリ、ドクガ、イラガなどの有毒昆虫がこれに相当する。ドクガは幼虫時代の毒毛を成虫が体につけて飛び回るので、直接皮膚に触れなくても、夜間灯火に飛来したガが毒毛を飛散させ、家庭で皮膚炎が蔓延(まんえん)して問題となる。

[倉橋 弘]

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普及版 字通 「毒虫」の読み・字形・画数・意味

【毒虫】どくちゆう

毒むし。

字通「毒」の項目を見る

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