法律または法律学,あるいは司法制度における一定の分野をさすのに用いられる語。技術的な用語として厳密な意味があるわけではないが,広い意味では,刑事法,すなわち犯罪およびその処罰に関する法領域(刑法,刑事訴訟法など)との対比で用いられる。民法,商法,民事訴訟法,労働法などが,だいたいにおいて民事法に含まれる。私法と呼ばれる分野と重なり合うことが多いが,私法の語は,公法との対比で用いられるので,厳密には私法と同じではない(たとえば,民事訴訟法は民事法に属することに争いはないが,その性格は公法であるとされている)。なお,民事という語は,刑事に対する語として,元来は,裁判制度上用いられたもののようであり(明治8年太政官布告103号裁判事務心得1条参照),現在でも司法制度における用語として用いられることが多い(裁判所における民事部,刑事部,法務省における民事局,刑事局など)。民事という語は,狭い意味では,商事に対する語として用いられる。商事留置権,商事仲立ちに対して,民事留置権,民事仲立ちという場合がそれである。
執筆者:平井 宜雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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