六訂版 家庭医学大全科 「気管損傷」の解説
気管損傷
きかんそんしょう
Tracheal injury
(外傷)
どんな外傷か
気管は空気を口から肺へ導く管状の器官です。
原因は何か
気管の損傷は、頸部に直接外力が加わる場合(バットで殴られる、倒れた拍子に階段の角に当たるなど)のほか、急激に頸部が伸ばされた場合や、高速で走っている自動車に乗車中、衝突によって体に大きな力が加わった時などに体内で引きちぎられるように断裂する、などの原因によって起こると考えられています。
症状の現れ方
症状は血痰や呼吸困難ですが、血痰、呼吸困難とともに頸部
検査と診断
確定診断には気管支鏡検査が必須ですが、理学所見上前記の3つの特徴(
治療の方法
単独の損傷であれば、手術により損傷部を修復することになります。放置すれば、呼吸困難の進行から死亡することもあるので、診断後直ちに緊急手術を行う必要があります。
多臓器損傷が合併していて、外科的治療が困難な場合には、気管内
軽い損傷の場合には経過観察を行うこともあり、日常生活に困難を感じない程度の変形を残して治る場合もあります。主治医に損傷の状態をよく説明してもらい、治療法を選択します。ただし、頸部気管の完全断裂症例は、救命が非常に困難な外傷のひとつです。進行性の呼吸困難で窒息の危険がある場合には、救命の目的で現場で気管切開を行わなければならない場合もあり、治療法に選択の余地はありません。このような場合には治療を救急の専門家に任せてください。
関連項目
堀之内 宏久
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報