気象制御(読み)きしょうせいぎょ(英語表記)weather modification

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

気象制御
きしょうせいぎょ
weather modification

気象や気候を人工的に変化させて人間生活に役立てようというもの。小規模な事例としては冷暖房を施すことで建物内に人工気象をつくりだし,農作物の生育に適した環境を構築するビニルハウスや温室がある。大規模な事例としては人工降雨・降雪,飛行場における霧消し,降ひょう制御,さらに台風制御などがある。大規模な土木工事によって海流を変化させて寒冷地の気候を温暖化させたり,大規模な灌漑によって砂漠を緑地化したりすることも大がかりな気象制御で,気候改変とでも呼ぶべきものである。人工降雨は,かなり長い歴史があるが,その効果については依然として判然とせず,近年はあまり行なわれていない。台風制御は,発達した台風の消滅や進路の変更ではなく,発達しつつある台風にヨウ化銀を撤布し,雲を消滅させて発達を抑制,あるいは勢力を削減する試みが 1990年代にアメリカ合衆国で行なわれた。今日ではコンピュータを用いた数値実験による制御の研究が行なわれている。

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知恵蔵の解説

気象制御

気象を人工的に制御し改変すること。気象改変ともいう。小規模だが加熱やファンなどによる防霜は実用化している。人工降雨は発煙機や航空機を用いて、人工の氷晶核であるドライアイスやヨウ化銀の微粒子を雲の中に散布(種まきという)し、降水を促進するもの。多くの国で試みられ、10%程度の増雨効果があったという報告もあるが、評価は一致していない。

(饒村曜 和歌山気象台長 / 宮澤清治 NHK放送用語委員会専門委員 / 2007年)

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世界大百科事典 第2版の解説

きしょうせいぎょ【気象制御 weather control】

気象現象を人工的に制御しようとすること。農作物の生育に適する気象条件を作る温室,生育を促進させるビニルハウスをはじめ,降霜を防ぐために地表面付近の空気に対流を起こさせることも身近な気象制御である。気象を任意に制御することが,気象学上の大きな夢といってもよい。今日まで行われてきた比較的大規模な気象制御実験として,人工降雨,人工消霧,降ひょう抑制,台風の制御などがある。【菊地 勝弘】

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

気象制御
きしょうせいぎょ

人工的に気象を制御すること。防風林をつくって風当たりを防いだり、夜間に煙をたいて早朝の霜を防ぐことなどは古くから行われてきた小規模の気象制御である。中・大規模な気象制御としては空港の滑走路の霧を除く法、ブドウ畑に降る雹(ひょう)を防ぐ法、灌漑(かんがい)用水や飲料水などを増やすための人工降雨(雪)、台風の進路を変え、その勢力を弱める台風制御などがある。
 気象制御の技術が急速に発展したのは、1946年にアメリカの気象学者らがヨウ化銀の微細な結晶が氷晶の芯(しん)になりうることを発見し、ついでドライアイスの細片やヨウ化銀の煙を飛行機で雲の上にまいて雨を降らせる実験に成功してからである。このような方法を「種まき」という。前記の大規模な気象制御に用いられる方法はおもにこの種まき法である。空港の滑走路の霧を除くために多量の燃料を燃やして空気を熱し霧を晴らす方法もあるが、現在実用化されているのはヨウ化銀の種まきであって、アメリカやヨーロッパの高緯度地方の空港で採用されている。防雹法については、ロケット弾や高射砲弾の中にヨウ化銀などの種を詰めて発射し、目星をつけた雲の中で爆発させて種をまく方法がとくに旧ソ連南部の地域で使用されていた。人工降雨には飛行機で種まきをするほか、地上で発煙し上昇気流に乗せて雲の中にヨウ化銀の種をまこうとする方法がある。世界各国がいろいろ試みているなかで、日本でも貯水池の水位を増加させるためなどに実地に用いられている。台風制御は大型航空機で台風の中心付近の上空から多量の種をまき、中心付近の雲を発達させることにより制御に結び付ける方法で、アメリカのハリケーンを対象に研究が進められた。しかし、1970年代以後、地球の環境破壊の問題が世界的に論議されるようになると、生命にもっとも関係の深い地球環境である大気が気象制御によって破壊されるおそれがあるとされ、以来、気象制御の計画はほとんど中止されている。[大田正次・股野宏志]

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