水疱性角膜症(読み)すいほうせいかくまくしょう

  • (眼の病気)
  • Bullous keratopathy

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

角膜の内側にある角膜内皮細胞が減少して密度が低下し、角膜の透明性が維持できなくなる症状。水分(房水)を眼球の内側に戻す機能に異常が起きて角膜がふくらむとともに、表面の角膜上皮に水疱ができて浮腫(ふしゅ)(むくみ)をきたす。角膜水疱症、水疱性角膜炎ともいう。浮腫の程度は角膜上皮に軽度の水疱が生じるものから角膜が膨化するものまであり、両眼に起こることもある。症状が進行した場合は角膜の膨化とともに混濁が起こり、光が通過しにくくなるため視力が低下する。また角膜上皮がさまざまな大きさの水疱で満たされて破裂し、疼痛(とうつう)を伴う。

 原因は角膜内皮細胞の減少のほか、先天的に角膜内皮に変性を伴うフックス角膜内皮変性症、白内障手術や緑内障治療による内皮細胞の傷害や炎症などがあげられる。治療は、軽度の初期病変に対しては高張食塩液の点眼および眼軟膏(なんこう)点入による水分吸入などの対症療法が行われ、これにより視力の回復がみられることがある。しかし、減少した角膜内皮細胞は再生しないため、重症化した場合には角膜移植を行うことになる。この場合、角膜全層を入れ替える全層角膜移植術か、内皮のみを入れ替える角膜内皮移植術を行う。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

六訂版 家庭医学大全科の解説

どんな病気か

 角膜が水ばれして光が通りにくくなるとともに、角膜表面(上皮)にも水がたまって水疱ができる病気です(図25)。

原因は何か

 角膜の内側に並んでいる内皮細胞の数が減って、角膜に入ってくる眼内の水(房水(ぼうすい))を眼内へもどすポンプのはたらきが低下するのが原因です。角膜の内皮細胞は、生まれてから死ぬまで増えることはないので、遺伝的に内皮細胞が弱かったり(フックス角膜内皮ジストロフィなど)、外的な原因で内皮細胞が障害されたり(外傷、角膜感染、白内障(はくないしょう)手術、緑内障(りょくないしょう)に対するレーザー治療など)した結果生じます。

症状の現れ方

 視力が低下するのはもちろんですが、表面の水疱のために、眼の痛みも伴ってきます。原因によって、両眼性であったり片眼性であったりします。

検査と診断

 角膜内皮細胞はそのまま拡大写真が撮影でき、細胞の密度を算定することができます。それによって内皮細胞が少なく、水疱性角膜症になりやすいかどうかを判定します。ただ、水疱性角膜症になってしまうと内皮細胞は撮影できなくなります。

治療の方法

 非常に初期には、濃度の濃い生理食塩水の点眼や眼軟膏(がんなんこう)で角膜中の水分を吸い取ることによって、少し視力がよくなりますが、根本的な治療としては、どうしても角膜移植が必要になります。最近は角膜の内皮側だけを入れかえる方法も行われるようになっています。

関連項目

 角膜の構造と透明な理由(コラム)、角膜ジストロフィ

井上 幸次


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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