日本大百科全書(ニッポニカ) 「水車発電機」の意味・わかりやすい解説
水車発電機
すいしゃはつでんき
water turbine generator
水車を原動機とした三相同期発電機。小容量では軸が水平な横軸形が用いられるが、多くは軸が垂直な縦軸形である。発電する交流の周波数は50ヘルツまたは60ヘルツであるが、両用のものもある。回転速度は火力発電のタービン発電機より低く、毎分100~1000回。容量は数百キロボルトアンペアのものから百万キロボルトアンペアと広範囲にわたっている。水車発電機は水車を駆動する水を利用して冷却するのが一般的である。
構造の主要部は、固定子と回転子に分けられる。固定子は中空円筒状の鉄心の内面に軸方向に多数のスロットを設け、これに三相の電機子巻線が入れてある。回転子は直流励磁された磁極がある回転界磁形である。極数Pは、周波数をf(単位はヘルツHz)、毎分の回転速度をnとするときf=Pn/120を満足するような値が選ばれる。この式により、fが一定のときnが小さければ、Pを多くしなければならない。そのため水車発電機は磁極数が多い。磁極の界磁巻線に直流を送るための電源を励磁機という。励磁機はかつては主軸に直結された直流発電機が用いられてきたが、現在では同期発電機とダイオード整流器とを組み合わせた形式が多く、この形では電気ブラシもスリップリング(固定ブラシと組み合わせて、回転子と固定子との間を連続的に電気的に接続する導体回転リング)もない構造にできる。これをブラシなし同期発電機という。
水車発電機は単独で運転することはまれで、同一発電所内では数機が並列に使われる。さらに同じ河川に沿ういくつかの発電所も含めて並列に結ばれ、広い地域にわたる電力系統の電源の一つとして運転される。水車に水をくみ上げるポンプの機能をもたせたものを揚水機といい、揚水式発電所に用いられる。揚水式では水車発電機はポンプの電動機としても使われる。また可変速揚水式はポンプの運転速度を制御することにより揚水時の消費電力を調節できるようにしたものである。
[磯部直吉・森本雅之]