沈従文(読み)シェンツォンウェン

デジタル大辞泉 「沈従文」の意味・読み・例文・類語

シェン‐ツォンウェン【沈従文】

[1902~1988]中国小説家本名、沈岳煥。湖南省出身。「辺城」など西南辺境舞台にした小説を書いた。中華人民共和国建国後に、非政治性を批判され自殺をはかる。のち、考古学研究に転じ、大著「中国古代服飾研究」を完成させた。しんじゅうぶん。

しん‐じゅうぶん【沈従文】

シェン=ツォンウェン

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「沈従文」の意味・わかりやすい解説

沈従文
しんじゅうぶん / シェンツォンウェン
(1902―1988)

中国の作家。湖南(こなん/フーナン)省鳳凰(ほうおう)県出身。本名は沈岳煥。祖母はミャオ族。15歳で軍閥の軍隊に入り、四川(しせん/スーチョワン)、湖南、湖北(こほく/フーペイ)、貴州(きしゅう/コイチョウ)省の各地を転戦。20歳のとき北京(ペキン)へ出、1927年、自伝的小説『入隊以後』で認められる。その後上海(シャンハイ)に移り、胡也頻(こやひん/フーイエピン)、丁玲(ていれい/ティンリン)と『紅黒』などの雑誌を編集するかたわら、新月派にも属し、『会明』『夫』『ランプ』など数十編に上る作品を書く。34年には清純甘美な悲恋を描いた『辺城』で国外にもその名を知られるが、左翼文壇からは「思想のない作家」と批判される。38年、未完の大作『長河』第1巻を香港(ホンコン)で発表するが、国内では国民党当局の検閲にあい、大幅に削除して48年にようやく出版される。解放後はブルジョア主義的傾向を批判され、51年、創作の筆を絶つ。その後は中国歴史博物館(現中国国家博物館)、故宮博物院に勤務、考古学の研究に従事し、80年には大部な『中国歴代服飾研究』を出版。中国社会科学院歴史研究所に勤務。『沈従文文集』全12巻(1982~85)が出版されている。

[小島久代]

『松枝茂夫訳「夫」「ランプ」(『中国現代文学選集6』所収・1962・平凡社)』『松枝茂夫訳「辺城」他(『現代中国文学5』所収・1972・河出書房新社)』

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百科事典マイペディア 「沈従文」の意味・わかりやすい解説

沈従文【しんじゅうぶん】

中国の作家,服飾史研究家。湖南省鳳凰の出身。少年時代に少数民族の多い地域で軍隊の軍事教育を受ける。1922年北京に移り,北京大学の聴講生のかたわら創作活動に入る。20歳の時,丁玲(ていれい)や胡也頻(こやひん)と雑誌《紅黒月刊》を創刊,作品は郁達夫,胡適,徐志摩らに高く評価され,北京派文人の1人となる。30年代にすぐれた短編,中編小説を発表するが,1948年,郭沫若に非政治性を糾弾され自殺を図るが未遂に終わり,以後,創作を断念して,考古学的文化史研究に転じる。後に,中国歴史博物館,故宮博物館などで工芸美術の研究を続け,記念碑的名著《中国古代服飾研究》(1981年)を完成。80年代に,夏志清らによって解放前の創作活動が再評価され,多くの読者を得ることになった。小説の代表作に湖西の郷土のミヤオ族の生活を抒情的・牧歌的に描いた《辺城》がある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「沈従文」の意味・わかりやすい解説

沈従文
しんじゅうぶん
Shen Cong-wen

[生]光緒28(1902).12.28. /光緒29(1903)
[没]1988.5.10. 北京
中国の小説家。湖南省鳳凰県の人。ミヤオ (苗) 族出身。軍人の家に生れ,13歳で地方軍閥に身を投じ,辺境の各地を遍歴,1922年北京に出て図書館に勤めながら小説を書き胡適に認められた。のち上海で丁玲胡也頻らと『紅黒月刊』を出し,『会明』 (1929) ,『従文自伝』 (31) ,『辺城』 (34) などで,主として体験に基づく辺境での軍隊生活や少数民族を描いた。抗日戦争中は昆明にあり,戦後北京に移って北京大学教授となったが,のちその反政治性を批判されて自殺未遂。 51年『私の学習』を発表して自己批判し,北京歴史博物館に勤務して服飾史などの研究に入り,故宮博物院でやはり歴史文物の研究に従事し第二~六期全国政治協商会議委員。作家協会顧問,少数民族作家学会名誉会長などを歴任。 82年来日。ほかに『竜朱』 (29) ,『夫』 (30) ,『月下小景』 (32) など。

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改訂新版 世界大百科事典 「沈従文」の意味・わかりやすい解説

沈従文 (しんじゅうぶん)
Shěn Cōng wén
生没年:1903-88

中国,現代の作家,古代服飾研究家。湖南省鳳凰県(湘西トゥチャ族ミヤオ族自治州)生れ。本名沈岳煥(がくかん)。筆名は小兵,休芸芸など多数。若いころ西南辺境の少数民族のあいだで兵士として暮らし,その経験が後年の小説創作の核となる。23年北京へ出て創作に志し,《現代評論》などに作品を発表。丁玲(ていれい),胡也頻(こやひん)と親しく,その伝記を書いた。29年ころから武漢,青島(チンタオ),昆明,北京などの大学で教えつつ多くの中短編小説を発表。代表作に《辺城》(1934)など。解放後は歴史博物館で古代の綢(どんす),服飾の研究にあたった。
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367日誕生日大事典 「沈従文」の解説

沈 従文 (ちん じゅうぶん)

生年月日:1902年12月28日
中国の小説家
1988年没

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