中国の作家。湖南(こなん/フーナン)省鳳凰(ほうおう)県出身。本名は沈岳煥。祖母はミャオ族。15歳で軍閥の軍隊に入り、四川(しせん/スーチョワン)、湖南、湖北(こほく/フーペイ)、貴州(きしゅう/コイチョウ)省の各地を転戦。20歳のとき北京(ペキン)へ出、1927年、自伝的小説『入隊以後』で認められる。その後上海(シャンハイ)に移り、胡也頻(こやひん/フーイエピン)、丁玲(ていれい/ティンリン)と『紅黒』などの雑誌を編集するかたわら、新月派にも属し、『会明』『夫』『ランプ』など数十編に上る作品を書く。34年には清純甘美な悲恋を描いた『辺城』で国外にもその名を知られるが、左翼文壇からは「思想のない作家」と批判される。38年、未完の大作『長河』第1巻を香港(ホンコン)で発表するが、国内では国民党当局の検閲にあい、大幅に削除して48年にようやく出版される。解放後はブルジョア主義的傾向を批判され、51年、創作の筆を絶つ。その後は中国歴史博物館(現中国国家博物館)、故宮博物院に勤務、考古学の研究に従事し、80年には大部な『中国歴代服飾研究』を出版。中国社会科学院歴史研究所に勤務。『沈従文文集』全12巻(1982~85)が出版されている。
[小島久代]
『松枝茂夫訳「夫」「ランプ」(『中国現代文学選集6』所収・1962・平凡社)』▽『松枝茂夫訳「辺城」他(『現代中国文学5』所収・1972・河出書房新社)』
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中国,現代の作家,古代服飾研究家。湖南省鳳凰県(湘西トゥチャ族ミヤオ族自治州)生れ。本名沈岳煥(がくかん)。筆名は小兵,休芸芸など多数。若いころ西南辺境の少数民族のあいだで兵士として暮らし,その経験が後年の小説創作の核となる。23年北京へ出て創作に志し,《現代評論》などに作品を発表。丁玲(ていれい),胡也頻(こやひん)と親しく,その伝記を書いた。29年ころから武漢,青島(チンタオ),昆明,北京などの大学で教えつつ多くの中短編小説を発表。代表作に《辺城》(1934)など。解放後は歴史博物館で古代の綢(どんす),服飾の研究にあたった。
執筆者:中島 みどり
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