沖縄密約暴露事件(読み)おきなわみつやくばくろじけん

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

沖縄密約暴露事件
おきなわみつやくばくろじけん

外務省公電漏洩(ろうえい)事件ともいう。沖縄返還協定成立直後の1972年(昭和47)3月末から4月初めにかけて、衆議院予算委員会を舞台に、社会党の横路孝弘(よこみちたかひろ)代議士ら野党議員が、外務省の極秘電報2通を材料に、沖縄返還交渉をめぐる日米間の密約問題を暴露し、佐藤内閣の責任を追及した。これをきっかけに、同年4月4日外務省は、同省の蓮見(はすみ)喜久子事務官が電報の内容を新聞記者に漏らしたという疑いで、同事務官を国家公務員法第100条(秘密を守る義務)違反容疑で告発した。警視庁は、蓮見事務官と、同事務官に秘密漏洩をそそのかした容疑(国家公務員法111条)で毎日新聞社政治部の西山太吉記者を逮捕、起訴した。
 公権力による新聞記者およびニュース・ソースの逮捕、起訴というこの事件は、(1)国家の秘密とは何か、(2)その秘密が形式秘の要件を備えているとしても、それが「刑罰で保護されるに足る実質的な秘密」であるかどうか、(3)外交交渉の経過と国民の「知る権利」との関連、(4)新聞記者に国公法を適用することが、表現の自由を定めた憲法第21条などに違反するのではないか、(5)記者の取材行為はどこまで認められるか、など多くの問題を提起した。西山の裁判は6年間にわたったが、1978年5月、最高裁判所第一小法廷(岸盛一裁判長)は、取材の自由に一定の理解を示したものの、西山の取材行為は「正当な取材活動の範囲を逸脱している」と断じて、上告を棄却、西山の有罪(懲役4月、執行猶予1年)が確定した。蓮見は74年1月、東京地方裁判所の一審で、被告の行為は、報道機関の公共的使命に奉仕する意図がなく、正当行為にあたらないとして有罪(懲役6月、執行猶予1年)になった。[高須正郎]

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