当事者の要求を退けることをいうが、民事訴訟における棄却と刑事訴訟における棄却とは、その意味内容が異なる。
[本間義信]
民事訴訟法上は、原告の訴え・被告の反訴による請求あるいは上訴による不服主張の全部または一部を、理由がないとして排斥すること。すなわち、当事者の主張の内容について判断し、これを否定することをいう。
これを宣言する判決を請求棄却判決、上訴棄却判決という。請求の内容に立ち入らないで事件を終結させる却下と区別される。棄却判決は、内容的には権利・義務の不存在を確認し、あるいは不服に理由がないことを確認する確認判決である。権利・義務不存在の判断につき既判力が生じる。
[本間義信]
刑事訴訟法上は、もっぱら手続の無効を理由に手続を打ち切る形式的な裁判の場合――公訴棄却(刑事訴訟法338条・339条)、正式裁判請求の棄却(同法468条)――と、手続の無効を理由とし、あるいは請求に理由なしとして手続を打ち切る場合――控訴棄却(同法375条・385条・386条)、上告棄却(同法408条・414条)、抗告棄却(同法426条)、再審請求棄却(同法446条・447条)――とに用いられる。なお行政争訟上は、争訟を提起した者の主張に理由がない場合その請求を退けることをいう。
[本間義信]
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「却下[裁判]」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 控訴審の裁判には,控訴状却下命令(288条),控訴を不適法として却下する判決(290条。なお293条参照),控訴を理由なしとする控訴棄却の判決(302条1項),控訴を理由ありとして認容する判決などがある。控訴棄却の判決は,控訴人の不服に理由がない場合だけでなく,第一審の判決理由が不当でその意味では不服に理由があっても,第一審判決の結論自体は他の理由から維持できる場合にも下される(302条2項)。…
…この訴え却下の判決は,訴訟判決とよばれ,訴えの内容となっている権利関係については,その存否についてはまったく触れない。権利関係を判断したうえでなされる判決を,訴訟判決に対し,本案判決といい,その中には,原告の請求を承認する請求認容の判決と,それを否定する請求棄却の判決がある。却下と棄却の判決は,このように内容が異なるけれども,原告が訴えによって求める判決を拒絶されることでは同じである。…
…終局判決は,事件の全部を解決するか一部を解決するかで,全部判決,一部判決に分かれ(243条2項,3項),また,本案判決,訴訟判決にも分かれる。本案判決とは,請求の当否について行われる判決で,請求を正当と認める判決を,請求認容判決,請求を不当として退ける判決を,請求棄却判決という。訴訟判決は,訴訟要件が欠けている場合に,原告の訴えを不適法として却下する判決である(訴え却下判決ともいう)。…
※「棄却」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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