沸・湧・涌(読み)わかす

精選版 日本国語大辞典の解説

わか・す【沸・湧・涌】

[1] 〘他サ五(四)〙
[一] (沸)
① 沸くようにする。水などを熱して煮え立たせる。また、水を適温にまで温める。
※書紀(720)允恭四年九月(図書寮本訓)「盟神探湯〈此をば区訶陀智と云ふ〉或は埿(うひち)を釜に納(いれ)(に)(ワカシ)て」
※随筆・北越雪譜(1836‐42)初「池中の水を湯に(ワカ)し価を以て浴せしむ」
② 金属を熱して溶かす。溶解する。
※書紀(720)天智九年是歳(北野本訓)「水碓(みつうす)を造て冶(かねワカス)
③ 酒を発酵させる。
※催馬楽(7C後‐8C)眉刀自女「又説 おほみき和可世(ワカセ)まゆとじめ」
[二] (湧・涌)
① わき上るようにする。水などをふき出させる。たぎらせる。
※漢書楊雄伝天暦二年点(948)「渭を涌(ワカシ)て涇を躍(ほとはし)がしむ」
② 発生させる。虫などをわき出させる。「うじをわかす」
③ 熱狂させる。興奮させる。わかせる。「会場をわかす」
※彼の歩んだ道(1965)〈末川博〉四「青年の血をわかすに足る政治情勢の変転が起ってきた」
[2] 〘自サ四〙 いらだつ。腹を立てる。怒る。
※評判記・吉原すずめ(1667)下「問ていはく、わかすとはいかに、答ていはく、はらをたつる事也」

わき【沸・湧・涌】

〘名〙 (動詞「わく(沸)」の連用形の名詞化)
① 沸くこと。沸きたつこと。煮えること。「沸きが早い」
※セルロイドの塔(1959)〈三浦朱門〉六「教師商売なんて、沸きの悪い風呂みたいな仕事はごめんだって」
② 魚群が押しよせて、海面が泡立ち白くなること。迫(せり)

わ・く【沸・湧・涌】

〘自カ五(四)〙
[一] (沸) 熱気などの作用によって、中から激しく動く。
① 液体が熱せられて高温になり、泡立ち盛りあがる。沸騰する。また、ある適当な温度になる。
※観智院本三宝絵(984)中「鬼泣き神なげき、山なり海わきぬ」
※日葡辞書(1603‐04)「ユガ vaqu(ワク)
② 金属が熱せられて融ける。
※天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃)「狗、門の両廂に在り。口に融(ワク)銅を咋めり」
③ 怒りの気持が起こる。立腹する。
※評判記・色道大鏡(1678)一「わく、根本わき桜といふ下略也。腹をたつる㒵(かたち)なり」
④ 熱狂して騒ぎ立てる。また、熱中する。「観客がわく」
※雑俳・都富士(1744)「さめるのもわくのも早し湯女の恋」
[二] (湧・涌) 見えなかったものが表面に現われ出る。
① 液体が地中からふき出す。また、激しい勢いで流れる。
※彌勒上生経賛平安初期点(850頃)「四は水踊(ワキ)て梁に繞り」
※宇津保(970‐999頃)祭の使「川のわきたる、滝落ちたるなど見給ふとて」
② 虫などが、自然に発生する。
※徒然草(1331頃)二四三「空よりやふりけん、土よりやわきけん」
※俳諧・続猿蓑(1698)上「明はつる伊勢の辛洲のとし籠り〈里圃〉 蓑はしらみのわかぬ一徳〈馬莧〉」
③ 比喩的に、物事が発生する。また、考えや感情などが生じる。
※伊勢集(11C後)「うきことのかくわく時は涙川目の前にこそ落ちたぎりけれ」
※当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一〇「何か理窟種が生(ワ)いてきたら」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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