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盟神探湯 くかたち

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

盟神探湯
くかたち

古代において行われた神判。『日本書紀』はこれを「探湯」と記しているが,「くか」は,けが,けがれと同語であって,つみ (罪) というに等しく,「たち」は断 (裁) であって,決定の意であると考えられる。『隋書』倭国伝には,毒蛇神判のことがみえているから,「くかたち」なるものは,多種類の神判を総称する語であって,書紀がこれに「盟神探湯」なる漢字を当てたのは,探湯神判が大和周辺の氏族の間で行われた代表的神判形式であったからであろう。「くかたち」は原則として,裁判に際して,事実の存否が明らかでない場合に,両当事者に科せられる。その様式は,第1に「わが言虚なれば,神罰をこうむらん」と誓う宗教的告白過程を行い,第2に正邪を分ける呪術的弁別過程を行う。その第2の様式はさまざまであり,盟神探湯の場合には,沸騰した湯の中の泥土または小石をさぐり取らせ,火傷の有無によって,罪を判定した。

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百科事典マイペディアの解説

盟神探湯【くかたち】

誓湯(うけいゆ)とも。古代の神判の一方法熱湯中の小石や泥土(ひじ)を,当事者に素手で取り出させ,火傷(やけど),ただれの有無,程度によって正邪を判断するもの。
→関連項目允恭天皇

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世界大百科事典 第2版の解説

くかたち【盟神探湯】

原始的な神判の一種で,訴訟当事者供述の正しいことを神に誓わせた後,熱湯をいれた甕の中を探らせ,小石を無事に取りだした者は正,手が焼けただれた者は偽と決める方法。〈くか〉は湯や羹(あつもの)を意味する朝鮮語kukと同源というが未詳で,熱湯の代りに蛇をいれておく方法や,灼熱した斧を手のひらに置く方法もある。いずれも訴訟当事者を恐怖させ,真実の供述を促す効果が期待されている。古代インドでも行われたようであるが,古代中国では《論語》に形容句として〈探湯〉の語があり,《古事記》《日本書紀》では允恭天皇のときに氏姓(うじかばね)の判定をするさいに行ったといい,《隋書》も6世紀末,7世紀初のころの日本で現実に行われていたことを伝えている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

盟神探湯
くかたち

古代における証拠方法。釜の中に入れた泥を煮沸してその中に小石を置き、被疑者または訴訟当事者にこれを取り出させて、手がただれるかただれないかによって罪の有無や主張の真否を判断する方法。古代は神の支配する社会であるから、罪の有無、当事者の主張の真否を神に証言させようとしたのであり、神は有罪または偽証した者の手をただれさせると考えたのである。有名な盟神探湯は、允恭(いんぎょう)天皇の4年に、そのころ氏姓(うじかばね)の秩序が乱れたので、これを糺(ただ)すために、味橿(あまかし)の丘の辞禍戸(ことのまがへのさき)に探湯瓮(くかへ)を据えて、諸々の氏姓の人に沐浴斎戒(ゆあみものいみ)させて行わせたというそれである。このとき天皇は実(まこと)を得る者は全く、偽らばかならず傷(やぶ)れるであろうといわれたという。おそらく日本で生まれた慣行であろう。律令(りつりょう)時代には行われなくなったが、法と宗教との密接な関係のふたたびみられる中世、ことに室町時代には、「湯起請(ゆぎしょう)」という名前で復活している。[石井良助]

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世界大百科事典内の盟神探湯の言及

【姓】より

…その時期は,おそらく6世紀に入ってからで,すでにその萌芽は5世紀の後半にみられたであろう。《日本書紀》允恭天皇4年条などにみられる氏姓を定めるための盟神探湯(くかたち)の伝説は,姓の制度の発生の一端を伝える伝説であろうし,また埼玉県行田市稲荷山古墳から出土した鉄剣銘にワカタケル(獲加多支)大王の時代の人として乎獲居(臣)の人名が記され,称号としての獲居(ワケ,別,和気)の下に,姓的な臣の称呼がそえられてあるのは,姓の制度が成立してくる様相を端的に示している。姓の制度は,684年(天武13)に制定された真人(まひと),朝臣(あそん),宿禰(すくね),忌寸(いみき)など八色の姓(やくさのかばね)で一段と整ったものとなり,律令国家において皇親の下に諸貴族,諸氏族を身分的に秩序づける標識とされた。…

【湯立】より

…神前で湯気をたちこめさせることは,巫女などを神がかりの状態にさせ,託宣(たくせん)をうかがうためのものであった。古代の盟神探湯(くかたち)も神意を問うためのものであり,のち,これを湯起請(ゆぎしよう)といった。中世ではこれが見物の対象となっていたことが,《康富記》宝徳3年(1451)9月29日条の粟田口神明の湯立の記事からうかがうことができる。…

※「盟神探湯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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