沿岸防衛(読み)えんがんぼうえい

改訂新版 世界大百科事典 「沿岸防衛」の意味・わかりやすい解説

沿岸防衛 (えんがんぼうえい)

沿岸海域に侵攻する敵の作戦兵力を撃破してその活動を封殺するとともに,沿岸の重要地域に対する襲撃や隠密侵入等に対し,領土周辺,一定範囲の海域を防衛することをいう。一般に港湾海峡防備と,沿岸海域の防備に大別される。港湾防備は重要な海上作戦基地と港湾における船舶の安全,港湾機能の維持を目標とし,海峡防備は自国船舶の通航の安全確保とともに,敵艦船の通峡阻止を目標とする。沿岸海域の防備は,周辺海域における海上交通路と漁業の保護ならびに離島防衛を目標とするほか,国土に近接する敵の早期発見と阻止撃退を目標とし,その範囲は地域の特性と情勢によって決められる。沿岸防衛は,従来領海周辺数カイリを対象として行われたが,航空機,潜水艦,ミサイルレーダー等の発達によって,防衛範囲も領海周辺の広い範囲を対象とする必要が生じてきた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「沿岸防衛」の意味・わかりやすい解説

沿岸防衛
えんがんぼうえい
coast defence

海上あるいは河川からの敵の侵入に対して沿岸を防衛すること。歴史を通じて,沿岸防衛は軍隊の重要な使命であった。特にローマ帝国は沿岸に要塞を構築したことで有名である。第2次世界大戦までの沿岸防衛は,あらかじめ構築した要塞施設,トーチカなどを中心とする陣地主体とした。第2次世界大戦中,ヨーロッパや太平洋島々で,ドイツ軍や日本軍は堅固な沿岸防衛陣地を構築した。また沿岸防衛には,固定陣地を守らず,敵が上陸,あるいは降下した地点に機動的に集中し,撃滅する方法もある。今日では,第2次世界大戦の戦訓と,兵器の発達によって,各国とも要塞施設を造らないようになった。沿岸の防衛に最も大きな影響のあるのは,制空,制海の問題である。 (→ヨーロッパ大要塞 )  

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