ロシア語で点の意味。1930年代前半にソ連軍が日本軍の侵入に対抗して満州(中国東北部)との国境線に沿って配備した鉄筋コンクリート製の恒久的火器陣地。日本軍ではこれを特種陣地と称した。厚さ1.5~2.5メートルのコンクリート壁の内部に機関銃、火砲、高射砲、観測器材を収容し、独立または複数の連繋(れんけい)射撃によって火力の拠点とし、また逆襲攻撃の基点とする。大きな司令トーチカは数階建ての建物内に指揮設備、通信設備、居住設備が整い、周辺のトーチカ群との間を地下道で結び、鉄条網、地雷原との組合せで強力な要塞(ようさい)となる。その後、日中戦争の中国軍、ヨーロッパ戦線の独・仏軍、太平洋戦線の日本軍がトーチカを構築している。トーチカ攻撃には、大規模な砲爆撃が正攻法で、近距離からの銃眼射撃、爆薬の投げ込み、火炎放射器による攻撃も効力がある。
[寺田近雄]
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…主陣地帯は,主抵抗地帯と主力砲兵陣地を主体とする主戦闘陣地であり,数帯に設けることがある。主抵抗地帯の編成方式には,分散配置式(野戦陣地を強化する方式や特火点(小型のコンクリート等で作られた機関銃座や砲座で,一般にトーチカともいう)を用いる方式)と支撐(しとう)点方式(近戦防御の拠点を骨幹とする方式)がある。しかし第2次大戦後は,攻撃兵器の進歩のため従来の永久陣地は少なくなり,大規模な地下掩蔽部の構築が行われている。…
…戦時には野戦軍と協力して,国境等の防御線の中核となり,攻勢作戦にあたっては野戦軍の攻撃の足がかりや補給基地として,また退却に際しては敵軍の阻止・分断等の戦略・戦術的役割を果たした(フランスのベルダン要塞,メッス要塞等)。 第1次世界大戦後は,戦車,航空機,火力の発達により,円形の要塞は敵の集中火力をうけて破壊され,また要塞と要塞の間隙(かんげき)を戦車で容易に突破されるようになったところから,特火点(一般にトーチカともいう)と呼ばれる小型のコンクリート製の機関銃座や砲座等を疎散に配置し,これらを地下道で結んだ一連の永久陣地帯を数線に構築し,国境地帯の要部を全面的にカバーする方式に変わってきた。堅い〈点〉としての要塞は,縦深・横広の〈線〉としての永久陣地帯へと変ぼうしたのである。…
※「トーチカ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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