泉佐野市(読み)イズミサノシ

デジタル大辞泉 「泉佐野市」の意味・読み・例文・類語

いずみさの‐し〔いづみさの‐〕【泉佐野市】

泉佐野

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本歴史地名大系 「泉佐野市」の解説

泉佐野市
いずみさのし

面積:五〇・八二平方キロ

府の南部に位置し、東は貝塚市および泉南郡熊取くまとり町、南は和歌山県那賀なが郡、西は泉南市および泉南郡田尻たじり町に接し、北西側は大阪湾に面する。市域の北西部は平地帯で、中央部は南北両側を緩やかな丘陵に囲まれた谷を形成、南東部は山間地帯となり和泉山脈の尾根に至る。この細長い市域を見出みで川・佐野川・樫井かしい(上流は犬鳴川)が流れる。熊取町に発する見出川は下流で貝塚市との境界をなし、和泉山脈に発する犬鳴いぬなき川は大木おおぎの盆地、土丸つちまるの峡谷を流下し、中流で樫井川となって泉南市との境界をなしている。市名は市成立の核となった佐野にちなむ。

〔原始・古代〕

現市域からは単独遺跡としての縄文・弥生時代の遺跡は発見されていないが、長滝ながたきの複合遺跡三軒屋さんげんや遺跡から縄文時代の集石遺構が確認され、同遺跡やみなとの湊遺跡、南中岡本の船岡山みなみなかおかもとのふなおかやま遺跡(いずれも複合遺跡)から弥生時代の遺物が出土、遺構も確認されている。とくに湊遺跡からは同時代の製塩土器が多量に検出され注目されている。古墳は長滝に明治初年頃までじようの塚とよばれる横穴式石室の遺構らしきものの存在が伝えられていて、兎田うさいだ古墳群(中心は現泉南市)に属する最大級の後期古墳であったと推定されている。当地域は紀氏一族勢力圏内として開発が進められ、やがて大和朝廷の勢力が及んだが、その開発と政治勢力の交替が衣通姫と茅渟ちぬ宮・茅渟池造営の伝承や遺構となったといわれる。また当時樫井川から上之郷かみのごう日根野ひねのの平野部に引水する用水が開かれ、その水口近くに大井関おおいぜき(現日根神社)が祀られており、古代豪族日根造による開発と、その氏族の祖先神祭祀とが結合していた様子がうかがえる。用水は現在も境内を流れている。樫井川中流域右岸に条里制遺構が残る。

律令制度のもとでは当市域は日根郡賀美かみ(和名抄)の地にあたる。郷内には日根郡の郡家も設置され郡の中心たる地位を占めた。郡家は上之郷辺りに比定されている。天平一〇年(七三八)四月五日付の和泉監正税帳(正倉院文書)には大領日根造・少領別君がみえ、ともに賀美郷を本貫とする豪族であったと考えられている。奈良時代後期には天皇家・貴族や地方豪族による土地の私有制度が展開し、平安京遷都を行って間もない桓武天皇は、延暦二二年(八〇三)と翌年に日根野に行幸し、桓田かいた野などで遊猟したことがあったが、この理由の一つは勅旨田開発にあったといわれている。延喜年間(九〇一―九二三)には和泉国の和泉郡・日根郡の海浜地帯に網曳あびこ御厨が設置され、内膳司に塩魚を生産して貢納したり、子と巳の日に新鮮な魚を御贄として貢進したりしたが、その網曳御厨の南限は鶴原つるはら・佐野の海岸に及んでいたらしい。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「泉佐野市」の意味・わかりやすい解説

泉佐野〔市〕
いずみさの

大阪府南西部,大阪湾岸から和泉山脈北斜面に広がる市。 1948年佐野町が名称変更して市制。 54年日根野 (ひねの) ,長滝 (ながたき) ,上之郷 (かみのごう) ,南中通,大土 (おおつち) の5村を編入。中心市街地の佐野は,中世,市場町として開け,近世には綿花,黒砂糖の集散地,および漁業の中心地として干鰯 (ほしか) 加工が盛んに行われ,有力な廻船問屋が輩出。明治以降は繊維工業都市となり,特にタオルの生産は全国1, 2位を争う。ほかに紡織用シャトル,木管の特産やワイヤロープスポーク,高圧電気用碍子などの工業がある。 63年以来臨海埋立地が造成され,水産食品コンビナートが立地。農村部では,溜池灌漑による米と裏作タマネギを栽培。 94年,海岸線の沖合に関西国際空港とそれを結ぶ空港連絡橋,関西空港自動車道が完成,海岸部にりんくうジャンクション,阪和自動車道と結ぶジャンクションがそれぞれ完成して新しい空の玄関口となった。伝説で知られる犬鳴山と七宝滝寺,名刹慈眼院などがあり,慈眼院の多宝塔は国宝,金堂は重要文化財。面積 56.51km2。人口 10万131(2020)。

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