県北部、阿波郡の東部に位置する。讃岐山脈の南麓、東流する吉野川北部にあたる。西は阿波町、東は
日開谷川の河岸段丘にある
現市場町域の南部に位置し、西を吉野川支流の
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
市場の存在が成立の基礎となって形成された集落。市場集落ともいう。物資交換の場としての〈市(いち)〉の形成と発展は別項〈市〉に見るとおりであるが,〈市〉の位置が定まり,定期に開催するための設備も整えられると,その場所が〈市〉〈市庭(いちば)〉〈市場〉と呼ばれた。市場は物資交換流通の場であるから,交通要衝の地が重要な立地的要因となる。したがって河川の沿岸,合流点,あるいは河口などに立地するのは当然のことである。それに加えて,地域的特産物の生産が盛んになると,その交換要望が高くなり,海浜地帯と農業地帯,農業地帯と山地との接触地点に市場が開催され,海産物と農産物の交換の場は河口,潟湖の湖口,港湾の湾口や湾奥に,農産物と林産物の交換の場は谷口付近に選定される場合が多い。後者の場合,山方諸村と里方諸村の接触地点に市が立地することになる(谷口集落)。そのようにして形成された市場の相互関係は,まず交換流通量の大なる市が核心的存在となり,その周辺に圏構造を構成する。もちろん,その地域の生産量や地形的環境により圏構造の規模は異なる。市場の存在が基礎となって集落が形成され,さらに市場が常設され,これが核となって集落が拡大発展する。かかる市場町は全国的に分布する。集落内の市場開催地は,社寺境内か門前が多い。中世の荘園領主の居館集落は,それ自体が荘園生産物の集散地でもあり,地方的商業町形成の可能性を含んでいる。また在地豪族の居館柵館集落においては,戦国時代に定期市が核となって街区を構成したものも多い。ヨーロッパの場合も中世以降,リヨン,ケルンなどでは都市成立の決定要因が市場であったことも注意すべきである。市場商業活動の最盛期は中世であるが,近世になると,関東,東北,北陸では多くの市場町が整備され活発化する。しかし畿内においては室町時代から店舗商業へと移行し,市場商業は衰退傾向にある。市場町が発展すると,周辺農村への影響だけではなく,地方の中心都市の培養にも役立つ。
今日,市場が存在したことを物語る地名は全国的に分布する。その関連地名を概略的に分類すると,まず〈市〉〈市場〉そのものの地名,市日を示す一日市,二日市,五日市などの地名,同じく二日町,三日町並びに三日市場,十日市場などの地名もある。なお過去の市場の存在を物語る古市,本市,古市場や新市,今市などがあり,また市場が所在した場所を表す北市,南市,東市場,津市場,丹波市,国市場など,さらにその地形的環境を表す地名,浜之市,河原市,野々市,山市場,峠(たお)市などもみられる。
→市 →市町 →在郷町
執筆者:山田 安彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
物資を交換取引する市場を中心に発達した町場集落をいう。古代には、物資の流通はほとんど市場によったので、大小の市場が諸地域に発達し、市場町は政治都市、港町とともに市街地の祖型をなした。そして、市場経済の最盛期であった中世はまた市場町分布の最濃密期であった。近世に入って物資の流通が店舗商業に転換すると市場町は減少した。現在では巨視的にはアフリカ、中近東、東南アジア、メラネシア、新大陸などのうちの発展途上地域にみられるにすぎない。それらの諸地方でも市場町の立地地区は、異民族居住の境界地区、また同一民族の居住地域でも地形や生産条件を異にする場合は、これらの境界地区に多くみられ、なかでも交通の便のよい所(渡河点、橋頭、港など)に多い。
現在、世界的に有名な市場町としては、フランスのリヨン、ドイツのフランクフルト・アム・マイン、ケルン、ベルギーのブリュージュ、ロシアのニジニー・ノブゴロド、韓国の大邱(たいきゅう/テグ)、中国の張家口(ちょうかこう/チャンチヤコウ)などがあげられる。また、大都市の市街地中にも市場町に始まる広場や街路があり、いまも盛んに市(いち)が立つ地区もある。ヨーロッパのローマンタウン起源の現代都市には、そうした市域内市場町が例外なくみられる。また、日本の現代市町村名には「市」がつけられているものが少なくないが、それらの多くは古代、中世、近世の市場町起源のものである。たとえば、一日市(ひといち)、二日(ふつか)市~八日市、廿日(はつか)市(あるいは町)、古市、今市、宮市、上市、下市などのごときである。現在、市場が流通の中心をなす所は少ないが、東北地方や日本海沿岸地域(新潟など)の一部では、いまも定期市がみられ、人々が集る所がある。
[浅香幸雄]
『中島義一著『市場集落』(1964・古今書院)』
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