精選版 日本国語大辞典 「泰山木」の意味・読み・例文・類語
たいさん‐ぼく【泰山木・大山木】
- 〘 名詞 〙 モクレン科の常緑高木。北アメリカ原産で庭園に栽植される。高さ一〇メートル以上になる。葉は柄をもち、長さ一二~二〇センチメートルの長楕円形。表面は暗緑色で光沢があり、裏面は赤褐色の細毛を密布。初夏、枝先に強い芳香のある白い大輪花が咲く。花は径一五~二〇センチメートルで、ふつう花弁状の萼片三個と、六個の花弁からなる。果実は円柱状広楕円形で長さ約八センチメートル。多数の袋果から成り、それぞれの中に赤い種子が二個ある。《 季語・夏 》
- [初出の実例]「はんにていにて、たいさんほくのはな見候」(出典:伊達家文書‐天正二年(1574)四月一八日・伊達輝宗日記)
泰山木の語誌
( 1 )語としては中世にも見られるが、品種は特定できない。「広益地錦抄‐一」(一七一九)には、蘭香木すなわちハクモクレンに関して「花のかたち大盞の表のごとくにて白し」という記述が見られる。牧野富太郎はこの記述に触れ、泰山木と同様の花を開く渡来植物を「大盞木」と呼んだものであろうと説いている。挙例の「伊達家文書」はこれを指すか。
( 2 )今日タイサンボクと呼んでいるものは、明治初期に渡来した北アメリカ原産のもので、当初は「大山木」と書かれた。しかし、松崎直枝の「趣味の樹木」(一九三二)に「大山木とあれども、自分が茲に敢て泰山木の字を用ゆる所以のものは、義は泰山よりも重しと云ふ詞に因む」とあり、そのころから「泰山木」という表記が定着したという。(深津正・小林義雄「木の名の由来」)