活仏(読み)カツブツ(その他表記)huó fó

精選版 日本国語大辞典 「活仏」の意味・読み・例文・類語

かつ‐ぶつクヮツ‥【活仏】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 普通の人間の姿をしてこの世に現われた仏。また、仏を思わせるような高徳の僧、情け深い人など。いきぼとけ。生如来(いきにょらい)
    1. [初出の実例]「今日の我身の上が直に活仏じゃものを」(出典:玄旨軒眼目(1693頃))
    2. 「実に是、濁世(ぢょくせ)に多く値偶(ちぐ)しがたき、人間未曾有の活仏なれば」(出典読本・近世説美少年録(1829‐32)二)
    3. [その他の文献]〔韓邦靖‐長安宮女行〕
  3. ラマ教首長ラマ教では転生によって出現するものと信じられている。ダライラマパンチェンラマの二種類がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「活仏」の意味・わかりやすい解説

活仏 (かつぶつ)
huó fó

転生活仏の略語チベット語ではトゥルクsprul sku,化身)またはクケーsku skyes,御転生)という。仏がこの世に出現させる化身の菩薩は,すべての人々が悟り救われるまで輪廻の世界に生まれかわって救済を続け,自分は理想とされる涅槃(ねはん)に入らないという《楞伽(りようが)経》の教えに基づいて,優れた僧をそのような菩薩とみなし,その死後49日間に受胎されて生まれた者のあいだから転生者を探し出す習慣が生じた。はじめカルマ,カーギュという2派の法主がこの方法で選出され,宗派意識の高揚に役立ったところから,この2派と対立したゲルク派が16世紀半ばに宗派的結束を図ってデープン寺住職の転生者を選んだ。これがダライ・ラマ転生の初めである。その後,活仏を選んで教法の系統を相続させる方式が普及し,客観的な証拠のないことと遺産相続を伴うところから選定がしばしば歪曲されたので,清朝支配下では金瓶に入れた名票を抽選させる対策がとられたこともあった。
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旺文社世界史事典 三訂版 「活仏」の解説

活仏
かつぶつ

チベット仏教(ラマ教)で高僧の生まれかわりの転生ラマ
黄帽 (こうぼう) 派は僧侶の妻帯を禁じているため,宗教指導者を世襲でなく,前任者の遺言した方向に,その死後1年以内に生まれた幼児の中から選んで決定することとした。チベットのダライ=ラマの例が著名である。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「活仏」の意味・わかりやすい解説

活仏
かつぶつ

「ダライ・ラマ」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の活仏の言及

【チャンジャ・フトクト】より

…中国,清代内モンゴルの最高の活仏で黄帽派(ゲルー派)ラマ教主の名称。その初代活仏ロサンチョエデン(1642‐1715)は青海地方に生まれ,ダライ・ラマ5世の弟子となったのち,1693年(康熙32)勅命を奉じて北京に来た。…

※「活仏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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