〈ほっす〉〈ほっしゅ〉ともいう。元来は仏の敬称。《中阿含第四十九大空経》に〈世尊ヲ法ノ本ト為シ,世尊ヲ法主ト為ス〉,《雑阿含経》第一に〈世尊ヲ法主ト為シ導ト為シ覆ト為ス〉,《勝鬘宝窟》巻中末に〈仏ハ諸法ヲ得タルガ故ニ法主ト名ヅク〉とある。しかしその後,教えを説く人,高位大徳,法会の主宰者,一派の管長,大本山の住職などさまざまな意味に使用されるようになった。《釈氏要覧》はそれについて,〈仏為説法主,今古皆以説法知法之僧,為法主〉といっている。中世以後,法主の語は多く高位大徳の敬称として用いられた。《法然上人行状画図》には,〈爰に我大師法主上人,行年四十三より念仏門にいりて,あまねくすゝめ易行道をしめして〉とあり,法然を法主上人といっている。《神皇正統記》宇多天皇の条には,法皇の出家後の系譜を示し〈法皇ハ両流(広沢・小野)ノ法主ニマシマス也〉とある。近世から近代にかけて,法主は本山の住職や一派の管長を指すのが一般的になった。《考信録》には,法主の同義語として,宗主,法王,禅主,法王主,門主,門跡の呼称をあげ,その出典を示している。しかし一般には,法主は宗主,門主,門跡と区別されず,併用されることが多かった。中国では,講法の主を法主と称し,僧官の一つにも法主があった。真宗大谷派は,1981年新宗憲を制定公布したが,法主の名称を門首とあらため,その地位を〈門首は,本派の僧侶及び門徒を代表して,真宗本廟の宗祖聖人真影の給仕並びに仏祖の崇敬に任ずる〉と規定した。これは,門主,法主の〈主〉の語が意味し,それによって生ずる主従関係を,教義によって否定したものである。
執筆者:北西 弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…元来は仏の敬称。《中阿含第四十九大空経》に〈世尊ヲ法ノ本ト為シ,世尊ヲ法主ト為ス〉,《雑阿含経》第一に〈世尊ヲ法主ト為シ導ト為シ覆ト為ス〉,《勝鬘宝窟》巻中末に〈仏ハ諸法ヲ得タルガ故ニ法主ト名ヅク〉とある。しかしその後,教えを説く人,高位大徳,法会の主宰者,一派の管長,大本山の住職などさまざまな意味に使用されるようになった。…
…たとえば,皇室ゆかりの名刹では,平安時代から勅許によって門跡(門主)の称が許され,いわゆる門跡寺院が現れた。また,延暦寺は座主(ざす),園城(おんじよう)寺(三井寺)は長吏,東寺は長者,西大寺は長老,本願寺は法主(または門跡),東大寺,興福寺,法隆寺は別当,日蓮宗諸本山は貫主(かんじゆ)(貫首),近世の檀林などの宗学研鑚の寺では能化(のうけ),化主などと,その寺独自の呼称があった。そして,近代ではこれら大寺院は宗派を超えて管長と称すことも多い。…
…元来は仏の敬称。《中阿含第四十九大空経》に〈世尊ヲ法ノ本ト為シ,世尊ヲ法主ト為ス〉,《雑阿含経》第一に〈世尊ヲ法主ト為シ導ト為シ覆ト為ス〉,《勝鬘宝窟》巻中末に〈仏ハ諸法ヲ得タルガ故ニ法主ト名ヅク〉とある。しかしその後,教えを説く人,高位大徳,法会の主宰者,一派の管長,大本山の住職などさまざまな意味に使用されるようになった。…
…たとえば,皇室ゆかりの名刹では,平安時代から勅許によって門跡(門主)の称が許され,いわゆる門跡寺院が現れた。また,延暦寺は座主(ざす),園城(おんじよう)寺(三井寺)は長吏,東寺は長者,西大寺は長老,本願寺は法主(または門跡),東大寺,興福寺,法隆寺は別当,日蓮宗諸本山は貫主(かんじゆ)(貫首),近世の檀林などの宗学研鑚の寺では能化(のうけ),化主などと,その寺独自の呼称があった。そして,近代ではこれら大寺院は宗派を超えて管長と称すことも多い。…
※「法主」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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