地層が波状に変形した構造を褶曲といい,この変形構造をつくる作用が現在まで継続している場合,その変形構造を活褶曲という。活褶曲の研究は1940年代初頭の大塚弥之助の研究に始まる。大塚は,秋田県,山形県などにおいて,新第三紀層の褶曲軸を横切る河成段丘面が,褶曲構造と同じ傾向の変形をしていることや,水準測量の繰返しから求められる地盤の隆起・沈降が,褶曲が成長する向きに進行していることから,これらの地域の褶曲が現在も“生きている”と考えた。大塚の研究した秋田・山形県のほか,その後の河成段丘面の変形の調査から,信濃川流域や,北海道などの各地でその存在が知られるようになった。また,この活褶曲の研究のために,山形県小国川流域には特別の水準点が設置された。さらに,1927年の関原地震(マグニチュードM5.3),61年の長岡地震(M5.2)にともなう水準点の変動から,地震と活褶曲の関係が論じられたことがあるが,水準測量の改測の期間や,水準点の分布の制約から,両者の間の関係は必ずしも明確にされているとは言い難い。これらの活褶曲はいずれも波長が数kmから十数kmのものである。これよりも波長の長い変形は波状変形または曲動(上方へのたわみを曲隆,下方へのたわみは曲降)と呼ばれ,プレートの相互作用のような大規模な地殻変動との関連において研究が進められている。
執筆者:衣笠 善博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
地層中で現在も成長しつつある褶曲(しゅうきょく)。本来ほぼ水平平坦(へいたん)であった河岸段丘面や海岸段丘面が波曲していること、およびその波曲と、段丘面下の地層の層理面の波曲が調和的であることから、その存在が推定されている。原理的には、そのような波曲面上の水準点の永続的変動を測量することによって、その波曲が現在活動中であるかどうかを確認できるはずである。これまでいくつかの地域でそのような測量が実施されているが、数十年という程度の期間で認められる水準変動はかならずしも段丘面の波曲に調和的でない。少なくとも何千年とか何万年の単位で水準変動をとらえて、初めて系統的波曲が現れるものと推定される。
日本では、秋田、山形、新潟などの新生界新第三系および第四系分布域で数例認められている。地質学者の大塚弥之助(やのすけ)が1941年(昭和16)に提唱して以来、活褶曲の研究は世界中で日本がもっとも盛んである。
[吉田鎮男]
…さらにまたそれらのもともとの地形がいつごろ形成されたものか,地形の形成年代が明らかになれば,変位量と形成年代から変位の速さを推定することもできる。第四紀(最近約200万年間)あるいはもっと限定すれば第四紀後期(最近約15万年間)に地形を変位・変形させている断層や褶曲は,活断層,活褶曲とよばれ,現在,および近い将来においても,再び活動することが推定されている。 日本の東北地方や近畿地方などでは山地と盆地の境界部に断層があって相対的な沈降部が盆地となっている。…
※「活褶曲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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