2地点間の高さの差(比高)を求める測量。一般に,測定原理によって直接水準測量と間接水準測量に大別される。水準測量は,陸上部の土地の標高を求めるために行われるほかに,トンネル,道路,河川など各種土木工事に付随して実施される。また,地下水のくみ上げなどによる地盤の沈下量調査や地震予知のための地殻変動量調査の手段として用いられている。
洗面器の中で静止している水の表面は,重力の方向(鉛直線)に垂直である。このように,ある面上のすべての点における鉛直線がその面に垂直であるような曲面のことを水準面という。水準面は,重力の等ポテンシャル面である。水準面の接平面を水平面といい,水平面と鉛直面の交線を水平線という。
地球をとりまく海水面の高さは,潮汐,海流,気圧,風,海水密度などの影響で変わるが,長期間にわたって平均すれば,その平均の海水面は,ほぼ一つの水準面に一致するとみなすことができる。平均海水面に最もよく一致するような一つの水準面をとくにジオイドという。ジオイドは,地球全体としては地軸方向にやや扁平な回転楕円体にきわめて近い形をしている。陸上における各地点の高さは,ジオイド面からの高さ,すなわちその点からジオイド面にいたる鉛直線の長さ(標高何mというのはこれにあたる)であって,これは水準測量により求められる。
一般に,水準儀(レベルlevel)と2本の標尺を用いて比高を求める測量。水準儀は,望遠鏡とその望遠鏡を容易に水平にすることができるような機構とをもった測量器械である。望遠鏡を水平にする機構には,水準器(気泡管)を用いるもの(Yレベル,ダンピーレベル,ティルティングレベルなどがある)と,重力を利用した自動的な水平補償機構をそなえたもの(自動レベル)とがある。水準標尺は,全長3m程度のまっすぐな物差であり,水準標尺を鉛直に立てるための円形水準器を付属している。
図1で,A点とB点の比高⊿H1を求めるには,A点とB点で水準標尺を鉛直に立て,その中間に水準儀をおき,二つの標尺の目盛を読む。読み取った目盛の差が比高⊿H1である。次に,A点の水準標尺をC点に,水準儀をB点とC点の中間に移し,同様の測定をすれば,B点とC点の比高⊿H2を求めることができる。したがって,A点とC点の比高は,⊿H1+⊿H2となり,A点の標高をHAとすれば,C点の標高HCは
HC=HA+(⊿H1+⊿H2)
で求められる。これが直接水準測量の原理である。この方法で求めた比高には,一般に次のような誤差が含まれる。(1)水準標尺の目盛の誤差,(2)標尺が完全に鉛直でないために生じる誤差,(3)水準儀の望遠鏡が完全に水平でないために生じる誤差,(4)水準面が平面でないために生じる誤差,(5)光の屈折による誤差,(6)陸上の各地点を通る水準面がジオイドと平行でないために生じる誤差,(7)その他。この中には,測量手順を工夫することによって消去できる誤差もある。これらの誤差は,偶然的なものと系統的なものに分けられる。広い地域にわたる水準測量では,系統的な誤差ができるだけ累積しないように補正計算が行われる。直接水準測量は,比高を測定する最も精度の良い方法であり,建設省国土地理院で行っている一等水準測量の精度は(Sは水準点間の距離でkm単位)程度である。
2地点間の距離が既知であるとき,一つの地点で他の地点の鉛直角(高度角)を測定し,三角法によって比高を求める測量。この方法は,直接水準測量よりも精度が低い。しかし,2地点間の距離が長く比高が大きい場合には,直接水準測量によらず,より能率的なこの方法が用いられることがある。山頂に置かれた三角点の標高は,ほとんどがこの方法によって決められている。
図2のように,A点でB点の高度角αを経緯儀などを用いて測定したとする。AE,BCは,測定器械および目標の地面からの高さである。AB間の比高⊿Hは
⊿H=BG=CD-BC+DF+FG
である。∠EDFは90度とみなせるので,CD=EDtanα,またはCD=ECsinαと書ける。AGは,三角測量から求められる距離であり,EDと等しいとみなせる。ECは,測距儀などで測定できる。また,DF=(EF)2/(2R)(Rは地球の半径で約6370km),FG=AEであるとみなせる。このようにして⊿Hを求めるのが三角法水準測量の原理である。この測量方法では,鉛直角の測定値に光の屈折による誤差が含まれるので,2地点間の距離が長く比高をできるだけ正確に求めたい場合は,補正する必要がある。
比高を求める方法には,前述の二つの方法のほかに,気圧計による方法,重力計による方法などいろいろあるが,精度は低い。三角法水準測量も含めて,これらを間接水準測量という。
執筆者:中堀 義郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
地上の各点の高さを求める測量。水準儀と標尺(スタッフstaff)を使い、2地点に垂直に立てた標尺を水平に観測してその読み取り値の差から2地点間の比高を求める直接水準測量と、1点に据えたトランシットtransitで他の点に置いた目標の高度角を観測し、三角法により比高を求める間接水準測量、または三角水準測量とがある。
直接水準測量のほうが精度は高いが、作業時間がかかるうえ、山地などでは実施できないので、山の高さなどはほとんど間接水準測量で求められている。いずれの場合にも、ある原点から出発して、次々と2点間の比高を求め、その累積和として各地点の標高を計算する。また気圧計を利用した気圧水準測量もときとして行われるが、精度は低く、数メートルに及ぶ誤差を生じることもある。
基本測量としての直接水準測量は一等および二等水準測量に分かれ、それぞれ主要国道沿いに全国を網羅して一等水準網、およびそのすきまを埋める二等水準網を形成している。これらの水準測量をしばしば繰り返して微少な標高の変化を求め、地盤沈下量や地震予知のための地殻変動量を検知するのにも使われる。水準測量の誤差は水準路線長の平方根に比例し、同一地点に戻って環を形づくった場合の閉合差、あるいは同一路線を往復2回観測したときの往復差により検知され、規制される。
[尾崎幸男 2016年11月18日]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…これは英語が強弱アクセントの言語で,原則的に語幹第1音節に強勢があり,この音節が意味上重要な部分であるために,以下の音節の母音が弱く不明瞭な音色となる傾向がもともとあり,それが促進されて,古くは区別されていた屈折語尾の弱音部の母音が一様に[ə]になったものである。これを水平化levellingという。また語彙ではフランス語起源の語が著しく増し,OE起源の多数の語とOEの豊かな造語能力が失われた。…
※「水準測量」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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