浮生六記(読み)ふせいろっき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「浮生六記」の意味・わかりやすい解説

浮生六記
ふせいろっき

中国、清(しん)代の文語小説。沈復(しんふく)(1763―?)の自伝。1877年刊。六巻。「閨房記楽(けいぼうきらく)」「閑情記趣(かんじょうきしゅ)」「坎坷記愁(かんかきしゅう)」「浪游記快(ろうゆうきかい)」「中山記歴(ちゅうざんきれき)」「養生記道(ようじょうきどう)」の六記であるが、前四巻だけ現存する。この小説は自伝であること、亡き妻を思う情の切なることで中国では珍しい作品である。妻との結婚生活、家族間のトラブル、幕客としての放浪生活など経済的にも感情的にもつらい立場にある妻への温かい目、夫のためにふさわしい妾(めかけ)を得ようと努力する妻、愛のみに生きた下層読書人の生活を如実に描いた珠玉の小品である。

[尾上兼英]

『松枝茂夫訳『浮生六記』(岩波文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「浮生六記」の意味・わかりやすい解説

浮生六記 (ふせいろっき)
Fú shēng liù jì

中国,清代中期の沈復(しんふく)(1763-?。字は三白)の思い出手記。全6巻のうち現存は4巻。敬愛する妻との間の,詩情雅趣にみちた前半10年余の生活,一転して貧窮と悲哀にくれる後半10年の生活を,淡々と記す。作者蘇州に生まれ,科挙を受験することもなく,地方官の私的顧問として,また画商として,各地を遍歴する。そこには,都市に住むほとんど無名の一下層文化人の生きかたがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「浮生六記」の意味・わかりやすい解説

浮生六記
ふせいろっき
Fu-shi liu-ji

中国,清の沈復 (しんふく) の随筆風自叙伝。4巻。嘉慶 13 (1808) 年頃成立。もと『閨房記楽』『閑情記趣』『坎か (かんか) 記愁』『浪游記快』『中山記歴』『養生記道』の6巻6記から成り,作者の手稿のまま読まれていたが,光緒3 (77) 年蘇州の大道露店で発見されて刊行され,そのとき,あとの2記は失われていた。夫としての妻への切々たる慕情と,画家としての自然へのしみじみとした愛情が全体の構成をまとめており,中国随筆文学中の傑作

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百科事典マイペディア 「浮生六記」の意味・わかりやすい解説

浮生六記【ふせいろっき】

中国,清の沈復(しんふく)〔1763-?〕の自伝体小説。6巻。1877年刊。独立した題名をもつ6編の短編からなるが,首尾照応し立体的構成をもつ。現存は前4編。亡妻陳芸(ちんうん)への切々たる慕情を,生き生きとした文章でつづる。書名李白の〈浮生は夢の如し〉に由来する。

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