工場、事業場などから排出される微少物質で、とくにディーゼル車からの排出物に問題が多く、「粒子状物質」として大気汚染防止法で別途規制している。肺がん、呼吸器疾患、花粉症などとの関連が指摘されており、粒径10マイクロメートル以上を「降下煤塵」、それ以下を「浮遊粉塵」に大別している。とくに肺胞にまで吸入される2.5マイクロメートル以下の「微小粒子状物質」が健康に強い影響があるとされる。1997年(平成9)の測定では全国測定局の総平均が一般環境大気測定局で0.033ミリグラム/立方メートル、自動車排出ガス測定局で0.04ミリグラム/立方メートルであり、数年来横ばい状態である。環境基準は1日平均0.10ミリグラム/立方メートル以下とされ、97年度達成率は一般局で61.9%、自動車排出ガス測定局で34%で、とくに大都市圏の環境基準達成率が低い。対策として、工場などでは施設の種類、規模ごとに防塵装置が義務づけられ、またディーゼル車には車種別の規制がある。さらにスパイクタイヤ粉塵も地域ごとに規制され、98年には817市町村が原則使用禁止に指定されている。近年、ゴミ焼却場などから塩化ビニールなどの燃焼にともないダイオキシンを排出していることが明らかにされ、あらためて浮遊粒子状物質の対策が緊急課題となった。ダイオキシン類対策特別措置法が制定され、焼却施設に規制が定められ、全国的にゴミ焼却施設の大改装が進められることになった。
[松田雄孝]
略称SPM.大気中に浮遊する粒子状の物質のうち,粒径が10 μm(0.01 mm)以下のもの.粒径2.5 μm(0.0025 mm)以下の粒子は,とくにPM2.5とよばれる.人為的発生源としては,工場や事業場などから排出されるばいじんやディーゼル車の排気ガスなどが,自然発生源としては,黄砂,火山の噴火,土壌の巻きあげ,海塩粒子などがある.浮遊粒子状物質は,気道や肺胞などの呼吸器に沈着して,ぜんそくやアレルギー疾患,肺がんなどの原因となることが指摘されて問題となっている.環境基準では,連続する24 h における1 h の平均値が0.10 mg m-3 以下であり,かつ1 h の値が0.20 mg m-3 以下であることが定められている.さらに浮遊粒子状物質の測定は,浮遊粒子状物質にかかわる大気の汚染の状況を的確に把握することができると認められる場所において,標準粒子より補正された測定器により,原則として地上3 m 以上10 m 未満の高さにおいて採気して行うことが決められている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
(畑明郎 大阪市立大学大学院経営学研究科教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 浮遊粉塵大気中に浮遊する微細な粒子状物質の総称で,光散乱法などで測定する。日本では,浮遊粉塵のうち粒径が10μm以下のものを重量表示したものを浮遊粒子状物質と定義している。大気汚染発生源の多様化により,重金属,放射性物質,各種化合物塩類,錯塩,キレートなどが含まれるようになり,肺の深部まで到達する。…
※「浮遊粒子状物質」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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