硫黄酸化物(読み)いおうさんかぶつ(英語表記)sulfur oxide

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

硫黄酸化物
いおうさんかぶつ
sulfur oxide

重油,石炭などが燃焼する際に含有されている硫黄が酸化されて発生するガス。無色で刺激臭があり,水に溶けやすい。二酸化硫黄 (亜硫酸ガス) が主体で,それに数%の三酸化硫黄などが混る。昭和 30年代のエネルギー転換により石油が主要なエネルギー源となってから急激に増加,都市ではビルの激増とそれに伴う冷暖房の普及につれて代表的な大気汚染源となった。二酸化硫黄は紫外線の刺激などでさらに酸化されて三酸化硫黄などになるが,これがさらに空気中の水蒸気にあって硫酸ミスト H2SO4 になる。呼吸により肺に入って刺激し,慢性気管支炎気管支喘息喘息性気管支炎肺気腫などを発病させ,また心臓病,呼吸器疾患を悪化させる。排出を次のように規制する。 (1) 煙突口の濃度規制,(2) 低硫黄燃料の使用,(3) 総量規制。

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知恵蔵の解説

硫黄酸化物

硫黄(いおう)が含まれる鉱石、石炭、石油などの地下資源を燃焼させた時に排出される、硫黄と酸素(O)の化合物で、亜硫酸ガス(二酸化硫黄)や無水硫酸(三酸化硫黄)などの総称。大気汚染の原因物質であり、植物の枯死、人体の呼吸器系疾患などをもたらす。無水硫酸は吸湿性が強く、大気中で硫酸ミスト(mist)となり、酸性雨の原因ともなる。SOx排出規制と排煙脱硫装置や石油脱硫装置などの公害防止施設の技術進歩により、大阪府では1971年に2254t/年だったものが81年には184t/年になるなど、大気中へのSOx排出量は10分の1以下に激減した。近年急速に工業化が進む中国では、製鉄所、発電所、工場などで公害防止施設が未設置のため、大量のSOxが排出され、大気汚染や酸性雨を発生させている。

(畑明郎 大阪市立大学大学院経営学研究科教授 / 2007年)

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世界大百科事典 第2版の解説

いおうさんかぶつ【硫黄酸化物 sulfur oxides】

硫黄の酸化物の総称であるが,おもに,硫黄Sを含んだ化石燃料の燃焼により二酸化硫黄SO2(亜硫酸ガス)や三酸化硫黄SO3の形で発生し,エーロゾルに吸着したり硫酸などの酸化物となって大気中に存在する。SO2は300~500ppmの濃度で短時間のうちに胸痛,意識混濁などの中毒症状を生じさせ,1.6ppmで健康人の上気道粘膜を刺激して可逆的な気管支収縮を発生させる。ぜんそく患者では0.25ppm2時間で影響が認められている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

硫黄酸化物
いおうさんかぶつ
sulfur oxides

硫黄の酸化物は酸化硫黄といい、各種の酸化物(たとえばS2O、SO、S2O3、SO2、SO3、S2O7、SnOmなど)があるが、硫黄酸化物というときは、やや異なる意味をもつことが多い。通常硫黄酸化物というときは、公害用語で、含硫黄物質の燃焼ガスに含まれる酸化硫黄のことで、二酸化硫黄SO2、三酸化硫黄SO3および硫酸ミストの総称。大気汚染物質の一つ。普通SOxで表し、通称ソックスという。その大部分は重油などの燃焼ガスに原因があり、一部は硫酸工場、金属製錬工場などの廃ガスによるものである。発生の際はほとんどが気体の二酸化硫黄であるが、水分があると大気中でしだいに酸化されて硫酸の微粒子(ミスト)となるので被害が大きくなる。そのため、大気汚染防止法などで、環境基準と排出基準が定められている。大気中の二酸化硫黄(亜硫酸ガス)含量を抑えるため重油の直接脱硫、また燃焼ガスや廃ガスの吸収液による脱硫(排煙脱硫)が行われる。硫黄酸化物は動物よりも植物に対して影響が大きいといわれる。[守永健一・中原勝儼]

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世界大百科事典内の硫黄酸化物の言及

【大気汚染】より


[大気汚染の影響]
 栃木県の渡良瀬川に沿って足尾町に入ると,赤茶けた岩山が姿を見せる。明治時代から続いた銅の製錬により,硫黄酸化物を含むばい煙が山を荒らし,坑木や燃料として森林が伐採された結果である。山火事も広範な山林を奪い,その後の新芽はばい煙のために育たず,土も酸性化してはがれ落ち,岩山の緑化も困難である。…

※「硫黄酸化物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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