浴剤(読み)よくざい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「浴剤」の意味・わかりやすい解説

浴剤
よくざい

疾病の治療、症状の緩和、皮膚の保護や洗浄、疲労回復など、美容と健康を目的として浴湯に加えて用いる薬剤で、浴用剤ともいう。浴剤には剤形、成分、効果から次のようなものがある。(1)バスクリスタル 塩類の結晶に色素と香料を添加したもので、古くから外国で用いられている。(2)バスソルト 温泉成分から発達したものと、硬水を軟化することを目的に使用するものと二種類あり、繁用されている。塩類としては、塩化ナトリウム炭酸ナトリウム炭酸水素ナトリウムホウ酸ナトリウム硫酸ナトリウム硫酸マグネシウム硫酸アルミニウム、臭化カリウム、硫化ナトリウム塩化カリウム炭酸マグネシウムなどが用いられ、硬水軟化にはポリリン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムが用いられ、これらに界面活性剤、油脂類、高分子物質が配合される。(3)植物性製剤 薬湯(くすりゆ)と称され、もともとは民間療法で、漢方から発達している。生薬(しょうやく)をカットしたものを袋に詰め、そのままか、または煎出(せんしゅつ)した液とともに浴槽に入れる。(4)ペースト状・ゼリー状製剤 植物抽出物を主成分とするが、このほかに麦芽コムギ海藻類の抽出物や、ラベンダー油、オリーブ油などの油脂を含有し、界面活性剤などで可溶化したものである。ヨーロッパに多くみられ、日本ではあまり用いられていない。(5)バスオイル 環境湿度の低い国で、皮膚表面の乾燥を防ぎ、美容の目的で用いられるもので、鉱物油が主成分で乳化剤を加えて製したもの。使用時の状態によりfloating bath oil, spreading bath oil, dispersible bath oil, cream bath oilの4種に分類される。(6)バスカプセル 軟カプセル中にバスオイルとバスパフュームを包含させたもので、湯の中に入れるとカプセルが溶け、成分が浴湯上に広がる。高級なイメージがある。(7)バブルバス 欧米では浴槽中でせっけんを用いて洗浄し、シャワーで洗い流す習慣がある。そのためにつくられた浴剤で、粉末状、顆粒(かりゅう)状、固形状、ペースト状のものが市販されている。成分として、脂肪酸エステル系、高級アルコールエーテル系、脂肪酸アミド系、グリセリン脂肪酸エステル系など各種の界面活性剤が用いられる。硬水でも泡立つこと、身体に害のないこと、浴槽が汚れないこと、脱脂力が強すぎないことが条件としてあげられる。(8)ミルクバス 乳液状、油状、粉末状の商品がある。肌に脂肪を補い、皮膚の保護と適度の水分を保つことが目的である。美容のためとベビー用の2種の製剤がある。(9)その他 欧米で多くみられるローション・タイプ、炭酸アルカリ塩と酸類の配合により炭酸ガスを発生する発泡性浴剤、香りを楽しみながら入浴するためのバスパフューム、酵素浴剤、また、剤形に特徴のあるものなど、がある。

[幸保文治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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