海岸の荒廃した砂地に,土木工事や樹木の植栽をおこなって防災林を造成し,飛砂や潮風などの被害を防ぐこと。土木工事だけで目的を達成できる場合もあるが,一般には,経費の節約や森林の多面的利用を考え,土木工事と樹木の植栽の組合せで砂防の目的を達成しようと計画する。砂防工事で造成された防災林は保安林に編入されるが,海岸砂防で造成される防災林には飛砂を防ぐための飛砂防備林と潮風や津波の害を防止する潮害防備林がある。山地から海へ流出した土砂の一部は海岸に打ち上げられ,砂地を形成する。この砂が内陸へ吹き送られ,発生する被害を防ぐために海岸砂防がおこなわれる。海岸防災林の工事は,人工砂丘の造成,静砂工,覆砂工,被覆工,植栽工の順序でおこなう。まず砂丘の造成は,波浪によって浸食を受けない場所で海岸線に沿って,そだ,竹,板などを使い,すき間のある高さ1m前後の垣を作り,砂がたまってから内陸側に次の垣を作り,これをくり返して人工的に高さ10mくらいの砂丘を作る。砂丘の内陸側は砂の移動がすくなくなるが,さらに2~4mの方形の垣による静砂工をおこなう。覆砂工は,そだ,わら,海藻などで砂の表面をおおい,植物の侵入を容易にする。続いて,砂草などによって地表を被覆する。最後に,固定した砂丘を含めて樹木を導入する。海岸砂防のための樹草は,山地砂防と同様の悪条件に耐えるほかに,飛砂,潮風に強いことが必要である。通常,草ではコウボウムギ,オウボウシバ,ハマニンニク,ハマススキなどの砂草のほか,外来草のウィーピングラブグラス,バミューダグラス,アメリカンビーチグラスなども有効である。樹木では,最終的に主林木となるクロマツ,カラマツ,カシワのほかヤシャブシ,ニセアカシア,アキグミ,ネムノキ,イタチハギ,マサキ,トベラなどを密植する。樹木の導入には,苗木の植栽のほかに播種(はしゆ),埋幹などもおこなわれる。秋田県の能代,山形県の酒田,鳥取県の砂丘地帯,鹿児島県の吹上浜などの海岸砂防は成功してりっぱな海岸林ができ上がっているが,これらの海岸林も,間伐,保育,更新などの技術的な問題点,主林木のマツのマツクイムシによる被害,さらに人口増加による住宅の接近,都会の地価上昇に伴う工業団地の海岸進出などの影響を受けて,存続,維持が困難になりつつある。
→砂防
執筆者:秋谷 孝一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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