海気相互作用(読み)かいきそうごさよう

改訂新版 世界大百科事典 「海気相互作用」の意味・わかりやすい解説

海気相互作用 (かいきそうごさよう)

大気海洋の間の相互作用狭義には海面を通してエネルギー,運動量などの物理量や水,二酸化炭素などの物質を大気と海洋の間で交換することであるが,広義にはそれに起因して大気と海洋が相互に影響を及ぼし合う諸過程を包含し,大気・海洋相互作用ともいわれる。地球規模でみると太陽放射エネルギーは大気中を透過し,その大部分は海洋に吸収されて蓄えられ,徐々に熱や水蒸気蒸発による潜熱として海洋から大気へ輸送される。地球表面の71%は海面であり,地球大気の300倍の質量をもつ海洋は大気に対して巨大な貯水槽,貯熱槽としての役割を果たしている。しかし,海洋は一方的に大気に影響を及ぼしているわけではない。大気から海洋への運動量輸送は海面における風波や海洋中のさまざまな運動を引き起こす。海洋は大気に引きずられて運動することにより,海洋の温度分布が変化し,大気に対する熱源分布がつくり変えられる。このように,海洋と大気は一方的な因果関係で結びつけられるのではなく,相互作用として考えられねばならない。大気や海洋にはさまざまな空間的・時間的規模の運動が存在するので,両者の相互作用にも異なる空間・時間規模の過程がある。これまでは海面付近の大気と海洋の境界層構造やエネルギー,運動量,物質などの乱渦輸送の小規模相互作用に関する研究が多かった。海洋は大気に比して大きな慣性もち,温度の保存性も大きいので,大気に対する応答は緩慢であるが,持続性は大きく,広範囲に長期間にわたる影響を大気に与えることができる。最近は,気象の長期変化や気候変動の研究と関連して,地球規模での相互作用も注目されるようになった。エルニーニョ南方振動などの現象は大規模相互作用の顕著な例と考えられている。今後の研究にまたねばならない問題が多い。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「海気相互作用」の意味・わかりやすい解説

海気相互作用
かいきそうごさよう
air-sea interaction

海洋と大気との間における気象学的、海洋学的相互作用のこと。

[編集部]

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